富士見町で捕獲された雌のニホンジカの放射性セシウム濃度値が基準値超えした件
----- 追記)翌年2018年も同じ山で基準値超えした野生シカが1件みつかりました。 2018年八ヶ岳編笠山で捕獲された野生鹿肉の放射性物質濃度基準値超えについて
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平成29年11月18日付け 信濃毎日新聞の発表によると、
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171118/KT171117FTI090028000.php
「県林務部は17日、諏訪郡富士見町で捕獲された雌のニホンジカ1頭の肉を調べた結果、国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える放射性セシウム137を156ベクレル(1キログラム当たり)検出したと発表した。」
長野県林務部に、測定結果詳細を問い合わせを行った。
その結果は下記の通りであった。
<長野県林務部 TEL 0262-35-7273>
測定日 2017/11/16
Cs-137 : 156 Bq/kg
Cs-134 : ND < 3.25Bq/kg
<解析>
放射性セシウム137と放射性セシウム134の濃度比率から、放射性物質の由来を推定することが可能である。(*1)
今回の放射性セシウムの由来が、1964年にピークを迎えた大気圏核実験由来なのか、2011年3月15日に大気に放出された福島第一原発事故由来なのかを解析した。
□ もし、Cs-137が全て、福島原発事故由来だと仮定すると
Cs-134/Cs-137の比率は、2017年11月16日時点で、 0.124 である。 (*1)
よって、
Cs-134の推定濃度値は、156 × 0.124 = 19.3 Bq/kg となる。
一方、長野県林務部が発表した、Cs-134濃度は、不検出であり、その検出下限値は、3.25Bq/kgであった。
以上から、検出された放射性セシウム137は、大半が、大気圏核実験 (もしくは、1986年チェルノブイリ原発事故 *4) 由来である可能性が高い。
□ より正確な配分比率(大気圏核実験由来/福島第一原発由来)はどうか?
検出下限値は、3.25Bq/kg であったので、この濃度が、
福島第一原発事故由来のCs-134が含まれていたが、ぎりぎり検出されなかった、
と仮定する。
Cs-137 = 3.25 / 0.124 = 26.2 Bq/kg
以上から、検出された、放射性セシウム137の濃度 156 Bq/kgの内、
最大で、 26.2Bq/kgまで
が、福島第一原発事故由来である可能性がある。
よって、
<結論>
(1)検出された放射性セシウム137の濃度 156Bq/kgの内、福島第一原発事故由来は、最大でも 1/6 である。
残りの、5/6以上、すなわち 130Bq/kg 以上は、1964年にピークを迎えた当時の大気圏核実験(もしくは、1986年チェルノブイリ原発事故 *4)由来であると推定される。
<考察>
過去の野生シカ肉の値で、長野県内で100Bq/kgを超えた事例は、
・合算 140 Bq/kg, H24年6月27日 軽井沢町
だけでした。
他は、殆どが一桁の濃度であり、多くても、
・大桑村:16(H27年3月8日)
・売木村:21.5(H26年9月28日)
といった値でした。
今回、八ヶ岳山系の富士見町で、大気圏核実験由来の放射性セシウム137のみで、 100Bq/kgを越す値が検出された事実は、初めての出来事です。 野生のシカがどのような生態(移動範囲、食料の種類や採り方)(*5)であるのか、 更に調査が必要と思われます。
(補足)
平成24(2012)年6月17日
軽井沢町
ニホンジカ(オス)
Cs-134 : 55Bq/kg
Cs-137 : 87Bq/kg
合算 140Bq/kg
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<解析>
2012年6月17日時点での、放射性セシウム134/放射性セシウム137比は、
134Cs / 137Cs = 0.6745
検出された放射性セシウム137の濃度から、推定される放射性セシウム134の濃度は、
87 × 0.6745 = 58.7 Bq/kg
以上から、
軽井沢町で捕獲され、平成24(2012)年6月17日に放射能計測されたニホンジカ(オス)の放射性セシウムの由来は、ほぼ100パーセント(厳密には96%)が、福島第一原発事故由来であると推定される。
■続報(2017-11-21)
・目的:近隣他県の事例を調査。
群馬県 基準値超え計測事例
H26(2014).11.27 Cs-134/Cs-137=29.7/153
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/s_chosa/pdf/150325_gunma.pdf
2014.11.27
Cs-134/Cs-137=0.3140
・計算
29.7/0.314= 94.6 Bq/kg
153-94.6= 58.4 Bq/kg
・結論
群馬県片品村でH26(2014)に捕獲されたニホンジカは、福島第一原発事故由来 以外 の放射性セシウム137が、60Bq/kg検出されている。
(*1)http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/04/post-1d72.html
放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率
(*2)
長野県
野生獣肉からの放射性物質の検査結果について 更新日:2017年11月13日
http://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/sangyo/ringyo/choju/hoshasei.html
(*3)
【信州放射能ラボ メールマガジン Volume-005, 2015-10-16発行】
■放射能 news (2015.10.16 信州放射能ラボ)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2015/10/news20151016-c3.html
(*4)1986年チェルノブイリ原発事故 (2017.11.22追記)
小山、岡田、山内@長野県林業総合センター(2010)
http://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/seika/kenkyu/ikurin/documents/iku-24-1.pdf
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