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■iSHL Technical Report■

2016年5月17日 (火)

食材の放射性カリウム40の濃度を計測することで食材に含まれるカリウム濃度が推定できるか?

食材の放射性カリウム40の濃度を計測することで食材に含まれるカリウム濃度が推定できるか?

■Wikiから

自然に存在するカリウムの含有量の0.0117 %の割合で放射性カリウム40は存在します。

カリウム1グラム当りの放射性カリウム40の濃度は30.4 Bqとなります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/カリウム40

従って、放射性カリウム40の濃度を知ることで、その食材のカリウム濃度を計測することが可能と推定されます。

■ネット上の情報から推定する

実際にキャベツを使って検証してみましょう。

http://www.yasainavi.com/eiyou/eiyouhyou/direction=desc/sort=potassium/level=1

このサイトによれば、

キャベツ100g中には、カリウムは、200mgあるそうです。

キャベツ1kgには、カリウムが、2g有ることになります。

また、先ほど記載した通り、

「カリウム1グラム当りの放射能強度は30.4 Bqとなります。」ので、

放射性カリウム40の濃度は、60.8Bq/kg となります。

■実測した濃度

貼付画像は、弊社で実測した、キャベツの放射性カリウム40の濃度です。

季節により変動がありますが、上記の情報と整合のある値であると言えると思います。

■式

以上から、

食材の放射性カリウム40の濃度[Bq/kg]を使って、

栄養学に用いられる、100g中でのカリウム濃度 mg を得るには、

次の式にて求められることになります。

食材のカリウム濃度[ mg/100g ]

= 100 *食材の放射性カリウム40の濃度[Bq/kg]/30.4

= 3.29 *食材の放射性カリウム40の濃度[Bq/kg]

応用)

キャベツの放射性カリウム40濃度:100Bq/kg

この、キャベツのカリウム濃度:329 [ mg/100g ]

このカリウム濃度は、他の野菜と比較すると、

http://www.yasainavi.com/eiyou/eiyouhyou/direction=desc/sort=potassium/level=1

蒸したじゃがいも相当ということになります。

http://foodslink.jp/syokuzaihyakka/Vitamin/eiyou/Kalium.htm#2

こちらの一覧も参考になります。

以上

2015年2月14日 (土)

果樹剪定枝の放射性セシウム濃度を推定する

目的:果樹剪定枝の放射性セシウム濃度を推定する。
方法:汚染モデル、測定事実から計算により推定値を求める。
汚染モデル:2011.3.15 福島第一原発事故で放出されたプルームは、山を越え、霧となった。
(落葉した裸の)果樹の樹木の表面に霧は付着し、枝表面を汚染した。

測定事実(1):H24(2012).1.31 剪定枝の放射性セシウム濃度は最大値で: 209 Bq/kg (*1)

次に、枝の汚染総量を求める。
剪定枝寸法:φ3cm、長さ30cmとする。
剪定した断面は汚染されていない、枝(円筒形状と単純化して)側面のみが汚染されているとする。
円筒側面の表面積:30 * π * 3cm = 3.1416 * 90 = 282.7 cm^2

仮定:枝の表面に、降下密度と同じ汚染が起きるとする。
測定事実(2):長野市の2011.3の降下密度 (*2)
Cs-134:1200Bq/m^2
Cs-137:1200Bq/m^2
Cs:2400 Bq/m^2
= 0.24 Bq/cm^2

よって、面積、282.7 cm^2 の汚染総量は、2011.3.15時点で
282.7 * 0.24 = 67.8 Bq

計算:半減期による推定。
2011-3-15に1:1の比で放出された放射性セシウム134、137は、2012.1.31時点では、それぞれの半減期により以下の通りとなる。(*3)
68 Bq → 58.6 Bq

内訳
Cs-137: 34 Bq
Cs-134: 34 Bq

2012.1.31時点では、
Cs-137: 33.3 Bq
Cs-134: 25.3 Bq
Cs: 58.6 Bq

一方、枝の重量は、
π * r^2 * L = 3.1416 * (1.5)^2 * 30 = 212 cm^3
枝の比重:1g/cm^3と仮定すると。
212g

よって求める、放射性セシウム濃度は、

58.6 Bq / 0.212 kg
= 276.4 Bq/kg

この値は、実測の最大値 209 Bq/kgの 約1.3倍であり、ほぼ整合性があると言える。

<関連資料>
*1)長野県(農政部) 果樹剪定枝の取扱いについて
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/02/post-9934.html

*2)2011年3月に長野市に降った放射性物質
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/11/20113-75c1.html

*3)放射性セシウム計算機
http://www.kani.com/ycrms/CalcCs/

<初出>
https://www.facebook.com/ichinoseshu/posts/786683214754844?comment_id=787482098008289&offset=0&total_comments=29

2014年3月25日 (火)

掃除機ごみパックの放射能を測定する試み

ある市民放射能測定所にて掃除機のごみパックに溜まった「塵(ちり)」を測定する試みが続けられています。(%1)

 

測定結果が公開されていますので、その測定値を元に簡単な解析をしてみましたので、ご報告します。

 

○方法:
1.仮定
ヨウ化ナトリウムシンチレーション式ガンマ線スペクトロメータに掃除機ごみパックをセットして、放射性物質(放射性セシウム137と放射性セシウム134)の濃度を計測しています。
この場合、以下の仮定において、測定結果の比較が可能となります。

 

仮定1)放射性物質濃度の定量的な校正を目的に使用した「標準線源」を満たした容器と同一容器を用いている。

 

仮定2)検体は、容器の所定体積の中に、すき間無く、均一に充填されている。

 

2.数量での比較
測定結果には、重量(g)、放射性セシウム137の濃度(Cs-137(Bq/kg))、同じく放射性セシウム134の濃度(Cs-134(Bq/kg))の他、試料情報として塵(ちり)を採取した場所と、収集した期間の記載されているものもあります。

 

そこで、上記結果を用いて以下の値を計算します。
数量[Bq] = 放射性物質濃度 [Bq/kg] * 重量 [kg]

 

また、塵(ちり)を収集した期間の判っているものについては、1日あたりの数量を計算します。

 

1日あたりの数量[Bq] = 数量 [Bq] / 収集した日数

 

○結果:
以下の表がその計算結果です。
 fujimiiru_tweet201403101850.xls 

 

(1)数量は大きかった順に、
85.5 [Bq]
45.8 [Bq]
39.2 [Bq]
でした。

 

(2)1日あたりの数量は、大きかった順に
1527 [mBq/日]
290 [mBq/日]
203 [mBq/日]
でした。(※ 1mBqは、0.001Bqです。)

この測定所が公開したデータの中で最大値を示したケースでは、
1日あたり約1.5ベクレルの数量の放射性セシウムを含む塵(ちり)を掃除機が集めたことになります。

■補足
「仮定2)検体は、容器の所定体積の中に、すき間無く均一に充填されている。」を満たしていない場合に何が起きるのか。所定体積に検体が満たない場合に、測定結果にどのように影響を与えるのか。この点につきまして、以前、計測実験をしましたので、詳細は次の記事をご参照ください。

 

 

・検体体積精度と放射能測定誤差の関係

http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/ishl-db48.html

結論だけ述べると、所定体積近傍にて、「所定体積よりも、体積が10%少ない状態で測定した場合は、放射能測定結果は、約5.7%大きい値を示す。」

直感的に何が起きているのかを理解するためには、以下の図が分かり易い。
(出典:山田崇裕「放射線計測の信頼性について」

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/kando_toukousen_ge.jpg

 

これは、センサ(Ge)から見た、「感度」の等高線である。センサに近い所ほど、感度が高い。センサから離れる程、感度は低下する。そのため、検体の中に、放射性物質が「均一」に分布していた場合と較べて、もし、局在した場合(例えば、底に放射性物質が集中しているなど)、本来容器の所定体積の中に均一に分布していることを前提に校正された装置にて得られる放射性物質濃度は、正しい値を得られない。(例えば、底に集中している場合は、真の値よりも大きい値として計測される。)

 

 

 

(%1) 出典:みんなの測定所・ふじみーる
https://twitter.com/fujimiiru/status/442960610037211136
(2020.2.10リンク切れ)

2013年8月25日 (日)

2013-8-15 諏訪市 松本市の空間線量率上昇について(その3)了

一区切りしました。まとめます。

2013-8-15 に、諏訪市 松本市の空間線量率が約0.1μSv/h急上昇しました。

このメカニズムは、以下のようなプロセスであったと考えられます。

「雨水に約300Bq/kgの半減期約30分の放射性物質が含まれていた。」
「降雨量100mmに達すると、平方メートルあたり、3万ベクレルとなった。」
「これにより、空間線量率が、0.1μSv/h 上昇した。」
「核種の半減期は30分であり、ピークを迎えた後は急激に減衰した。」

この半減期約30分の放射性物質とは、過去の知見より、
ラドンガスの崩壊核種(娘核種)である、放射性ビスマス214や、放射性鉛214であると考えられます。

■観察結果:
(1)8/15の岡谷市の雨量は、117mm (16:00~22:00)

 ※諏訪湖水門付近の雨量。

(2)空間線量率の減衰カーブから求めた半減期は、25〜36分。

■補足事実:
(3)放射性セシウムの降下密度と空間線量率上昇の関係は、
「 27,600 Bq/m^2 にて、 0.1μSv/hの上昇。」(注1)

■主たる核種の1cm線量当量率定数
Cs-137 : 0.0927
Cs-134 : 0.249
Bi-214 : 0.207
※この定数とBq→μSv/h換算は、比例する。

(4)ラドン222の娘核種、Bi-214,Pb-214の半減期
 Bi-214 : 19.9分
 Pb-214 : 26.8分

(5)論文:
http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/news_99_N09913.pdf
降雨による地表面付近の環境放射線量率の変動状況(2002)
「調査期間中の雨水中にはすべて放射能が含まれており、その濃度は1リットルあたり数十Bqから最大~1,600Bq程度(15分間採取測定値)、平均的には~300Bq程度で、放射性物質の種類は自然界に存在する鉛-214、ビスマス-214の2種類のみであった。」

関連記事:
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2013/08/2015-8-15-f0ef.html

2013-8-15 諏訪市 松本市の空間線量率上昇について(その1)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2013/08/2013-8-15-2d95.html

2013-8-15 諏訪市 松本市の空間線量率上昇について(その2)

%1)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/05/425-bqkg-svh-81.html

2013年8月24日 (土)

2013-8-15 諏訪市 松本市の空間線量率上昇について(その1)

2013-8-15 諏訪市 松本市の空間線量率上昇について(その1)
空間線量率が約0.1μSv/h急上昇しました。
関連データを整理しておきます。

■空間線量率データ
http://radioactivity.nsr.go.jp/map/ja/
http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/20130815_suwa_matsumoto_sv_h.png

■降雨量
http://www.pref.nagano.lg.jp/kikikan/happyou/250815ooame08231700.pdf
平成25年8月15日の大雨による県内への影響について
危機管理部 8月23日
釜口水門(岡谷市) : 117mm (16:00~22:00)

■雨水放射能測定結果
雨水の放射能測定
2013/8/15の降雨の期間 屋外に出しっぱなしにしておいたバケツに貯まった雨水を計測した。
場所:松本市


測定日:2013.8.19 00:11
Cs-137 ND (<0.4Bq/kg)
Cs-134 ND (<0.3Bq/kg)
I-131 ND (<0.4Bq/kg)
Bi-214 (609keV) : 0.54 ± 0.27 [Bq/kg]

■考察
・空間線量率の上昇と降雨のタイミングが合致しているので、要因は、雨水に含まれる放射性物質と考えて良いと思います。
・ただし、4日後の雨水のゲルマ測定では、多くても、Bi-214 (609keV) : 0.54 [Bq/kg] でした。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2013/08/post-a19b.html
で述べた通り、井戸水に含まれるBi-214はラドンガス由来のため半減期は、3.8日です。
そのため、雨水中のBi-214濃度は、約倍の1Bq/kg程度だったと推定されます。
(注記:これは、Rn-222とBi-214が放射平衡に入った後の議論です。)
・岡谷市釜口水門での、積算雨量117mmより、1m^2あたり、117リットルの雨水が降雨しました。
従って、Bi-214に注目すれば、 117 [Bq/m^2] の降下量と考えられます。
(注記:これは、Rn-222とBi-214が放射平衡に入った後の議論です。)

・一方、福島原発由来の放射性セシウムによる、降下量と空間線量率の関係は、以下の通りでした。(%1)
「 27,600 Bq/m^2 にて、 0.1μSv/hの上昇。」

・1cm線量当量率定数  [(μSv/h)/(MBq・m^2)] : アイソトープ手帳より
Cs-137 : 0.0927

Cs-134 : 0.249

Bi-214 : 0.207

以上より、
「空間線量率が 0.1μSv/h上昇した時、平方メートルあたり、27600ベクレルの放射性物質が有る。」、つまり今回の100ミリを超える雨では、平方メートルあたり約100リットルとなるので、
「空間線量率が 0.1μSv/h上昇した時、降雨量100mmの雨の放射能濃度は、276Bq/kgであった。」と推定されます。
しかし、実際に降雨に含まれるガンマ線成分(Geで見える核種、今回Bi-214に注目した)からの推定では、まだ、100倍程の差があり、更に解析を要する。
(追記:以下に述べる「参考資料」によれば、「雨中の放射性物質は、Bi-214,Pb-214であった。」「降雨時の雨水の放射性物質濃度は、平均300Bq/kgであり、最大1200Bq/kgであった。」とのことです。上述の推定と整合します。)

■補足

http://www.pref.nagano.lg.jp/kikikan/bosai/nuclear/1207kenshu/kankyoshiryo1207.pdf

県が取り組む放射能対策について
長野県環境部
空間放射線量の測定
県内7ヵ所のモニタリングポストにより、常時測定。
持ち運びできるサーベイメータも配備

 

これらの画像から、測定はガンマ線を計測する方式のサーベイメータであると思われる。
(※表面汚染などの計測する場合には、β線を計測できるGM(ガイガーミュラー管)などが使用される場合もある。)

■参考資料 (Ao氏に感謝)

http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/news_99_N09913.pdf

降雨による地表面付近の環境放射線量率の変動状況
電力技術研究所 技術開発ニュース Nol.99/2002-11

調査期間中の雨水中にはすべて放射能が含まれており、その濃度は1リットルあたり数十Bqから最大~1,600Bq程度(15分間採取測定値)、平均的には~300Bq程度で、放射性物質の種類は自然界に存在する鉛-214、ビスマス-214の2種類のみであった。


%1)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/05/425-bqkg-svh-81.html

(修正履歴)
2013.8.25 表題の年の誤表記を修正しました。2015->2013
2013.8.25 追記:(注記:これは、Rn-222とBi-214が放射平衡に入った後の議論です。)
2013.8.25 修正 1cm線量当量率定数  [(μSv/h)/(MBq・m^2)]

【iSHL Technical Report 】井戸水中に含まれる放射性ビスマス214の測定

【iSHL Technical Report : アイメジャー信州放射能ラボ 技術資料】

井戸水中に含まれる放射性ビスマス214の測定

井戸水に含まれる放射性ビスマスに注目し、井戸水採取後の放射能の変化を計測した。

○方法:
井戸水1リットルを採取し、ゲルマニウム半導体検出器にて放射能を計測する。
TechnoAP TG-150B , s/n= 001
検体:1リットル (マリネリ容器)
測定時間:8時間(Cs-137 検出下限値 約0.5Bq/kg)
井戸水をアクリル容器に入れフタをし、ビニールテープで隙間をシールした状態で放置し、時間を置いて、繰り返し測定を行った。
測定回数:3回
採取から、0.91日後
採取から、4.76日後
採取から、13.55日後。

○結果:
井戸水採取日から測定日時まの経過日数とBi-214(609keV)の放射能 [Bq/kg]

第1回:0.91日後 29.04 ± 0.91 Bq/kg
第2回:4.76日後 12.74 ± 0.48 Bq/kg
第3回:13.55日後 3.35 ± 0.33 Bq/kg

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/idomizu_bi214.png

○解析:
Bi-214は、半減期19.9分の核種である。にも関わらず今回の観察では、井戸水採取から4日以上経過しても、その濃度が半分程度にしか減っていない。
放射能の減衰から、半減期を求める。
計算式:
N = N_0 * (1/2) ^(d/T_0)

N:崩壊後の原子数
N_0:初期原子数
d:経過日数
T_0:半減期
T_0 = - d/log2(N/N_0)

計算:
第2回−第1回差分:3.86日
第3回-第1回差分:12.64日
計算による推定半減期は、それぞれ、
推定半減期(3.86日経過データより):3.24日、
推定半減期(12.64日経過データより):4.06日

○結論

井戸水に含まれる放射性ビスマスに注目し、井戸水採取後の放射能の変化を計測した。半減期19.9分の放射性ビスマス214のみかけの半減期は、3.24〜4.06日であった。これは、Bi-214の親核種である、ラドン222の半減期、3.82日に近い値であり、半減期19.9分のBi-214が井戸水中から観測される理由は、ラドンガスが井戸水中に溶解しているためと推定される。

(記事修正履歴)

20130828 修正:[Bi-214は、半減期19.9分の核種である。にも関わらず今回の観察では、井戸水採取から4日以上経過しても、その濃度が半分程度にしか減っていない。]

2013年6月 7日 (金)

【iSHL 実験報告】国産麦茶飲料の放射性セシウム抽出率の測定

【iSHL 実験報告】 国産麦茶飲料の放射性セシウム移行係数抽出率の測定
[2013.6.7]

1.目的
放射性セシウムに汚染された麦茶原料から、お湯で抽出して麦茶を入れた際に、麦茶原料から、麦茶飲料に移行抽出する放射性セシウムの比率(移行係数抽出率)を計測する。

2.方法

麦茶投入量:2リットルのお湯に麦茶を200g投入した。(規定では35g/2L)
抽出時間:沸騰したお湯に麦茶原料を投入し、3分経過後にガスの火を止め、そのまま約30分間放置した。(規定では、2〜3分後に火を止める。放置時間の記載無し。)
フィルタ:スレンレス篩で漉し、麦茶飲料用とした。(*1)
放射能測定装置:ゲルマニウム半導体検出器(TechnoAP社製 TG150B)

3.結果

[A]抽出前

Cs:24.4+-2.8 [Bq/kg]
Cs-137:16.3+-1.5 [Bq/kg]
Cs-134:8.1+-1.3 [Bq/kg]
正味重量:295g
容器:1Lマリネリ

このうち、2/3を麦茶(飲料)抽出に使用。
使用した麦茶に含まれれ全放射性セシウムの放射能値:24.4*0.295*2/3=4.80Bq

Fig.-1: (A) 麦茶 原料

[B]抽出後飲料

Cs:1.8+-0.3 [Bq/kg]
Cs-137:1.0+-0.2 [Bq/kg]
Cs-134:0.8+-0.1 [Bq/kg]
正味重量:1010g
容器:1Lマリネリ

※抽出液は、全部で1500g。
抽出した麦茶飲料に含まれる全放射性セシウムの放射能値:1.8*1.5=2.7Bq

Fig.-2 (B) 抽出後 麦茶飲料

[C]出涸らし

Cs:4.1+-0.8 [Bq/kg]
Cs-137:2.6+-0.4 [Bq/kg]
Cs-134:1.6+-0.4 [Bq/kg]
正味重量:475g
容器:V5(630mL)

麦茶飲料を抽出した後の出涸らしに含まれれ全放射性セシウムの放射能値:4.1*0.475=1.95Bq

Fig.-3 (C) 麦茶出涸らし

4.結論、解析
移行係数抽出率は、2.7/4.8=0.56であった。
(※ 56% ですので、半分以上が飲料側に移ったということになります。)
・"ベクレル保存の法則"の検証結果:
(B+C)/A= (2.7+1.95)/4.8=0.969
3%程度の精度が今回の実験で得られたと推定される。

<参照>
■お茶移行係数抽出率
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/ishl-a9ed.html

■測定結果公開 麦茶
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/post-dff9.html

<検体情報>
エーコープ国内産
六条大麦使用 むぎ茶
賞味期限 2013.7.31
測定結果公開依頼者が、電話でエーコープに問い合わせ済。
ロットすべてが茨城県産の六条大麦。

(*1)ステンレス篩
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/07/ishl-433e.html

■付録
質問を頂きましたので追記します。
twitterより
https://twitter.com/Rosa_centifolia/status/344350246844903425

@Rosa_centifolia きょん さん
川崎市でネット中心に(母数52)給食アンケートとったら、0.03Bq/Kg 37% 0Bq/Kg 35% 1 Bq/Kg 22% 3~5Bq/Kg 4% 0.5Bq/Kg(合算1Bq) 2% でした。

質問と回答:
○質問:麦茶の規定どおりに淹れて、もし今回の移行係数抽出率通りで飲用麦茶に移行したと仮定すると、放射性セシウム濃度が、0.03Bq/Kg 未満となるためには、麦茶原料は幾つ未満であるべきか?
○答え:3 Bq/kg未満。

○計算: 麦茶の汚染 を X Bq/kgとして、 規定の淹れ方は、2Lに35g。
35gに、Csは、X * 35/1000 Bq
これが、0.56移行抽出すると仮定する。
0.56 * X * 35/1000 Bq 2Lの飲料完成とする。
濃度は、 (0.56*X*35/1000)/2 Bq/kg
これが、0.03未満であるためには、
(0.56*X*35/1000)/2 <0.03
X < 3Bq/kg

(記事修正履歴)
2013.6.10 移行係数抽出率、%表記を注記。
2013.8.25 「移行係数」を抽出率に変更。
※移行係数は、一般的に、土壌の放射性物質濃度と、農作物の放射性物質濃度の比率を意味するとのご指摘を頂きました。C-Labのo様ありがとうございました。

2012年11月27日 (火)

計算 もし放射性セシウムが60MBq/km^2降下したならばゲルマで検出は可能だ

■相談事例
最近、放射性物質を含むガレキを焼却した際に煙突から拡散する(であろう)放射性セシウムの降下量を測りたい。
という相談が複数件やって来た。
焼却前後で、土壌中の放射性セシウムの濃度変化を土壌を測定することで測ることができないか?という問い合わせだ。

さてここで考察。
果たして、どの程度の汚染をゲルマニウム半導体検出器を使って測定できるのだろうか。
こうした計算を行うための基本的な考えを考察してみたい。

■土壌測定シミュレーション
例えば、昨年3月の1ヶ月間に長野県の県庁所在地(長野市)には、
Cs-134+Cs-137合算で、2400MBq/km^2降下したと文科省は発表している。2011年3月に長野市に降った放射性物質

2,400 MBq/km^2 = 2400 Bq/m^2 = 0.24 Bq/cm^2

このデータを具体的な事例として利用し、放射性セシウム合算で、0.24Bq/cm^2降下した土壌を計測することを検討する。
土壌のサンプリングの方法や、測定下限値をどの程度とすべきだろうか。

例えば、直径14cmの円を大地に描き、垂直方向に円筒状にくり抜いて土壌をサンプリングすることを考える。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/07/post-57b8.html

もし、直径14cmの円、深さ5cmの土壌を採取する仮定すると、
円の面積=π*r^2=3.1416 x 7^2=154cm^2。
深さx5cm = 770cc
ここで、土壌の比重を1.3と仮定する。
サンプリングした土壌の重量は、1000g となる。

まとめると、
直径14cmの円で、深さ5cmまで土壌を採取すると、
面積:154cm^2
重量:1kg
となる。

■放射性物質濃度の測定値予測
降下密度が、0.24Bq/cm^2なので、154cm^2で、39Bq
サンプリング土壌の重量は、ぴったり1kgなので、測定濃度は、39Bq/kgになると推定される。
よって、定量下限14Bq/kg程度の測定で十分定量可能な量である。

以上の方法を用いた場合の測定限界はいくつになるだろうか。

例えば、ゲルマでの検出限界を、1Bq/kg(核種あたり0.5Bq/kg)と仮定する。
上記の測定方法で、
0.24Bq/cm^2降下 の時に、
39Bq/kg であった。
よって、
0.006Bq/cm^2
=60Bq/m^2
=60MBq/km^2
以上の降下があれば、土壌検査の手段で検出ができる。ということになる。

■結論
60 MBq/km^2 の降下量(60 Bq/m^2)があれば、土壌検査の手法で放射性セシウムの検出が可能である。

2012年11月17日 (土)

Cs-134のガンマ線はCs-137の2.7倍、人体への影響が大きい

Cs-134のガンマ線はCs-137の2.7倍、人体への影響が大きい。

■ベクレルとμSv/hを繋げるには

1ベクレルは、1秒間に1回核崩壊が起きる頻度を言い、放射能の単位です。
これは純粋な物理現象。

一方、空間線量率で用いているマイクロシーベルト毎時は、人体への障害の程度を表す単位。

このベクレルとシーベルトを結びつけるのが、「実効線量率定数 1cm線量当量率定数」という係数です。実効線量率定数 1cm線量当量率定数は、核種(元素の種類)を決めると、あらかじめ、いくつになるか決まっている。

今回、原発から放出された代表的な放射性セシウムは以下の通りです。

核種 : 実効線量率定数 1cm線量当量率定数
Cs-137:0.0779 0.0927 [(μSv/h)/MBq]
Cs-134:0.211  0.249 [(μSv/h)/MBq]

実効線量率定数 1cm線量当量率定数とは、百万ベクレル(1MBq)の核種を中心に置いて、そこから1メートル離れた場所での空間線量率(μSv/h)として定義されている。

この定数を使うと次のことが分かる。
・百万ベクレルの放射性セシウム137から1メートル離れた位置の空間線量率は、0.0779 0.0927 [μSv/h]である。

核種の状態を微少な点と仮定した場合、光と全く同じ扱いができる。よってその強度は、距離の2乗に反比例する。
例えば、距離が1/10に近くなると、100倍強くなる。
・百万ベクレルの放射性セシウム137から0.1メートル離れた位置の空間線量率は、7.79 9.27[μSv/h]である。

また、放射線の強度は、放射性物質の量に比例する。
・1万ベクレルの放射性セシウム137から0.1メートル離れた位置の空間線量率は、0.0779 0.0927 [μSv/h]である。

■Cs-134とCs-137

今回、主に2011年3月15日に、東京電力福島第1原子力発電所2号機から放出した放射性物質は、放射性セシウム134と放射性セシウム137が、Bq値にして、ほぼ1:1の比率で放出されたと言われている。(%1)

しかし、注意して上記の定数を見ると、Cs-134の方が、Cs-137よりも、2.7倍大きな値であることが分かる。
つまり、1回核崩壊した時の人体への影響を較べるとCs-134の方がCs-137よりも、2.7倍強いということになる。
何故だろうか。
これは、スペクトルを見ると分かる。

https://www.imeasure.jp/wp-content/uploads/Ge_sample_fig.pdf

Cs-137は、662keVに1本のガンマ線を発生する。
しかし、Cs-134は、605keV, 796keV, の他に、569keV, 802keV, 563keVにもガンマ線を放出する。
ようするに、1回の崩壊で、5種類のガンマ線を同時に放出する134の方が、1回の崩壊で、1種類のガンマ線を出すCs-137より、人体への影響が強いということになるわけですね。

<参考資料>
%1)「1:1の比率で放出された」
放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/04/post-1d72.html

(修正履歴)
2012.11.18 タイトルを変更。村上直行さんに感謝。
2013.2.9 「実効線量率定数」を「1cm線量当量率定数」に修正。

2012年9月12日 (水)

iSHL実験報告:検体体積精度と放射能測定誤差の関係

1.目的
以前の記事で、弊社ゲルマニウム半導体検出器による測定結果の精度について、考えられる要因を洗い出した。(%1)

今回は、その要因の中で、

  1−2.相対定量に影響する要因〜繰り返し再現に影響する要因
  (要因71)容器へ検体を詰めた際の幾何学的な要因
  (要因711)容器への検体を詰めた際の 体積精度

に関した実験を行う。
つまり、規定体積の容器に対して、検体の体積が過剰(もしくは不足)した場合に、放射能測定結果にどのような影響を及ぼすか、その傾向を把握することが目的となる。

2.実験方法
標準線源(放射性セシウム合算値、約27Bq/kg汚染された玄米)を規定量、ならびに、合計5水準体積(質量)を変えて充填し、放射能を計測する。
測定:ゲルマニウム半導体検出器。テクノエーピー社 TG150B
容器:750mLパッカ容器

3.結果
検体正味重量ならびに、Cs-137,Cs-134,Cs合算値の測定結果は下記の通りである。

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/rpt_750ml_table_fig.png

4.解析
規定重量近傍での、体積変動に対する,放射能測定値変動の比率は、−0.57であった。
言い換えると、この750mL容器においては、規定体積よりも、充填検体の体積が、減少(もしくは、過剰)した場合、その体積変動率が、放射能変動率へ寄与する比率は、−0.57である。
例えば、体積変動率を規定量に対して−10%精度で管理した場合、放射能測定結果への影響は、+5.7%となる。(体積が減ると、放射能値は誤って増加する。)

%1)弊社ゲルマニウム半導体検出器による測定結果の精度について

 

http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/post-2367.html

より以前の記事一覧