薪ストーブの灰の放射能測定結果 200 Bq/kgについて
薪ストーブの灰の放射能測定結果:
Cs-137: 200.4 ± 3.8 Bq/kg
についてお客様からの質問に回答した事例を公開します。
(お客様からの承諾を得ております。)
Q:
薪ストーブの灰の数値 200Bq/kg は、どのように捉えたらよいでしょうか。計算して頂いた薪の数値 約1.23 Bq/kgは、薪として扱う際に高くないと捉えているのですが、それが灰になると気になるのは、薪をくべる時や掃除をする時に空気中に舞い、吸ってしまうことだと思います。
インターネットで検索してみると、200Bq/kgくらいの値は高すぎるわけではないようですが、マスクをしたりして気をつければよいレベルと捉えてよいでしょうか。
放射能が出ている時点で安全ということはできないのはわかっていますが、専門家の観点から、どのような数値として捉えていらっしゃいますか。何かアドバイスなど頂ければ幸いです。
A:
ご質問の件、私の方から回答させて頂きます。
長野県の判断が一つの参考になると思います。
平成24年(2012年)1月31日 に長野県は、果樹剪定枝の野外焼却をしない様に求める地域を発表しました。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/02/post-9934.html
この時の考え方の基準値は、
ーーーーー
(1)焼却灰が 8000Bq/kgを超えないこと。
(2)薪を焼却すると濃縮は約200倍になる。
(3)選定枝 40Bq/kgを超える場合は、屋外でのたき火処分を禁止。
ーーーーー
でした。
(1)灰が 8000Bq/kgを超えないこと。
これは、環境省が原発事故後に発表した基準であり、8000Bq/kgを超えた焼却灰は、自治体の保管が義務づけられました。8000Bq/kgを下回った焼却灰は、通常のゴミ処理として埋め立てられたり、セメントの材料として流通しました。
(2)薪を焼却すると濃縮は約200倍になる。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2011/12/post-3176.html
(3)長野県は、 8000/200=40 Bq/kg という計算をしたと考えられます。
以上 より、○○様が調べられた知見通り、200Bq/kgという値は、マスクをしたりして気をつければよいレベルでよろしいかと存じます。
■焼却灰のリスク:
現時点で、以下のようなリスクが推定されます。
従来、放射性セシウムを摂取した時に体内から排出されるペースとして、70日が採用されています。
[参考論文]
米・小麦・牛乳の放射能汚染と学校給食 中川尚子、蓮井誠一郎、原口弥生@茨城大学 H24.7.6
しかし、事故直後、対応した原発作業員の被曝のデータが公開されています。
2015年08月10日 読売新聞記事:
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2018/10/post-75fa.html
これを見ると、事故後800日までは、仮定(70日)にほぼ近い100日程度の半減期で減衰していますが、それ以降は、抜けにくくなっています。この原因として、放出されたセシウムの形状が、酸化したガラス玉状であることが指摘されています。いわゆる、セシウムボウルと呼ばれる微細な(直径が数マイクロメートルの)球です。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2015/09/volume-004-2015.html#paper
通常、セシウムは、カリウムと同じ元素の仲間なので、イオン状態であれば、定説通り体内から排出されますが、酸化した球状のガラス玉のため体から排出されにくいのでは無いか?という仮説が提唱されています。
以上から、焼却灰をできるだけ、吸引しないように気を付けることをお奨めします。土中に埋めてしまえば、そこから放出される放射線は、ガンマ線のみであり、8000Bq/kg未満は埋め立てても良いと判断した環境省の判断基準からしても、200Bq/kgはその値の1/40であり、問題ないと思います。
以上 よろしくお願いします。
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