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2017年11月

2017年11月20日 (月)

富士見町で捕獲された雌のニホンジカの放射性セシウム濃度値が基準値超えした件

富士見町で捕獲された雌のニホンジカの放射性セシウム濃度値が基準値超えした件


平成29年11月18日付け 信濃毎日新聞の発表によると、

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171118/KT171117FTI090028000.php

「県林務部は17日、諏訪郡富士見町で捕獲された雌のニホンジカ1頭の肉を調べた結果、国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える放射性セシウム137を156ベクレル(1キログラム当たり)検出したと発表した。」

長野県林務部に、測定結果詳細を問い合わせを行った。

その結果は下記の通りであった。

<長野県林務部 TEL 0262-35-7273>

測定日 2017/11/16
Cs-137 : 156 Bq/kg
Cs-134 : ND < 3.25Bq/kg

<解析>
放射性セシウム137と放射性セシウム134の濃度比率から、放射性物質の由来を推定することが可能である。(*1)
今回の放射性セシウムの由来が、1964年にピークを迎えた大気圏核実験由来なのか、2011年3月15日に大気に放出された福島第一原発事故由来なのかを解析した。

□ もし、Cs-137が全て、福島原発事故由来だと仮定すると

 Cs-134/Cs-137の比率は、2017年11月16日時点で、 0.124 である。 (*1)
 よって、
 Cs-134の推定濃度値は、156 × 0.124 = 19.3 Bq/kg となる。

 一方、長野県林務部が発表した、Cs-134濃度は、不検出であり、その検出下限値は、3.25Bq/kgであった。

 以上から、検出された放射性セシウム137は、大半が、大気圏核実験 (もしくは、1986年チェルノブイリ原発事故 *4) 由来である可能性が高い。

□ より正確な配分比率(大気圏核実験由来/福島第一原発由来)はどうか?

 検出下限値は、3.25Bq/kg であったので、この濃度が、
 福島第一原発事故由来のCs-134が含まれていたが、ぎりぎり検出されなかった、
 と仮定する。

 Cs-137 = 3.25 / 0.124 = 26.2 Bq/kg

 以上から、検出された、放射性セシウム137の濃度 156 Bq/kgの内、
 最大で、 26.2Bq/kgまで
 が、福島第一原発事故由来である可能性がある。

 よって、

<結論>

(1)検出された放射性セシウム137の濃度 156Bq/kgの内、福島第一原発事故由来は、最大でも 1/6 である。
 残りの、5/6以上、すなわち 130Bq/kg 以上は、1964年にピークを迎えた当時の大気圏核実験(もしくは、1986年チェルノブイリ原発事故 *4)由来であると推定される。



<考察>

過去の野生シカ肉の値で、長野県内で100Bq/kgを超えた事例は、
・合算 140 Bq/kg, H24年6月27日 軽井沢町 
だけでした。
他は、殆どが一桁の濃度であり、多くても、
・大桑村:16(H27年3月8日)
・売木村:21.5(H26年9月28日)
といった値でした。
今回、八ヶ岳山系の富士見町で、大気圏核実験由来の放射性セシウム137のみで、 100Bq/kgを越す値が検出された事実は、初めての出来事です。 野生のシカがどのような生態(移動範囲、食料の種類や採り方)(*5)であるのか、 更に調査が必要と思われます。

(補足)
長野県下で、野生シカの放射性セシウム濃度が基準値越えした事例は今回は2例目だった。参考まで、前回の軽井沢での検出事例について、同様に放射性セシウム134/137比率から、由来を解析した。
-----
(*2) より、
平成24(2012)年6月17日
軽井沢町
ニホンジカ(オス)
Cs-134 : 55Bq/kg
Cs-137 : 87Bq/kg
合算 140Bq/kg
-----
<解析>
2012年6月17日時点での、放射性セシウム134/放射性セシウム137比は、
134Cs / 137Cs = 0.6745
検出された放射性セシウム137の濃度から、推定される放射性セシウム134の濃度は、
87 ×  0.6745 = 58.7 Bq/kg

以上から、
軽井沢町で捕獲され、平成24(2012)年6月17日に放射能計測されたニホンジカ(オス)の放射性セシウムの由来は、ほぼ100パーセント(厳密には96%)が、福島第一原発事故由来であると推定される。

■続報(2017-11-21)
Amikasayama
信濃毎日新聞 2017.11.21,第30面
「一方、富士見町は20日の町議会全員協議会で、セシウムが国の基準値を超えたニホンジカは八ヶ岳連峰南端の編笠山(2524メートル)で捕獲されたと明らかにした。」
=====
(解析 つづき 11/23)
・目的:近隣他県の事例を調査。
群馬県 基準値超え計測事例
H26(2014).11.27 Cs-134/Cs-137=29.7/153
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/s_chosa/pdf/150325_gunma.pdf
・Cs-134/Cs-137比理論値(*1)
2014.11.27
Cs-134/Cs-137=0.3140

・計算
29.7/0.314= 94.6 Bq/kg
153-94.6= 58.4 Bq/kg

・結論
群馬県片品村でH26(2014)に捕獲されたニホンジカは、福島第一原発事故由来 以外 の放射性セシウム137が、60Bq/kg検出されている。

=====
<参考>
(*1)http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/04/post-1d72.html
放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率

(*2)
長野県
野生獣肉からの放射性物質の検査結果について 更新日:2017年11月13日


http://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/sangyo/ringyo/choju/hoshasei.html

(*3)
【信州放射能ラボ メールマガジン Volume-005, 2015-10-16発行】
■放射能 news (2015.10.16 信州放射能ラボ)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2015/10/news20151016-c3.html

(*4)1986年チェルノブイリ原発事故 (2017.11.22追記)
放射性セシウム134が検出された場合、その半減期が2年であることから、福島原発事故由来の成分がどの程度含まれているのかを推定することが可能である(*1)。しかし、検出された放射性物質が放射性セシウム137のみの場合、日本で検出される可能性が高い原因は、主に1964年の大気圏核実験由来であると推定される。一方で、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故由来の放射性セシウム137は、日本でも認められているが検出された量は、相対的に1964年の大気圏核実験由来の放射性セシウム137の量よりも少ない。
詳しくは、弊社ブログ記事:
「311前の土壌のCs137濃度」
を参照ください。 このグラフの中で、 1986年以降に顕著なピークは認められない。
(*5)論文
ニホンジカの食害による森林被害の実態と防除技術の開発
小山、岡田、山内@長野県林業総合センター(2010)
http://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/seika/kenkyu/ikurin/documents/iku-24-1.pdf
(以上)

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