【信州放射能ラボ メールマガジン Volume-013, 2016-9-9発行】
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■放射能 news (2016.9.9 信州放射能ラボ)
信濃毎日新聞は長野県を中心として発行されている地方新聞です。
ここに掲載された放射能測定結果等を1ヶ月毎にまとめて発信致します。
<凡例>
20160805s33
2016年8月5日付け第33面の記事。数字の単位[Bq/kg]
○信濃毎日新聞上に報告された放射性セシウム濃度合算値
2016年(平成28年)8月分
8月
20160805s33
家庭ゴミ焼却灰
長野市松岡
飛灰 Cs-137:21、Cs-134:ND(<10)
主灰 Cs-137:ND(<10)、Cs-134:ND(<10)
20160831s29
汚泥焼却灰
上田市清浄園 Cs-137:28
飛灰
上田(上田市天神) 23
丸子(上田市腰越) 19
東部(東御市田中) 14
主灰と飛灰の混合灰
上田 13
丸子 ND(<10)
東部 ND(<10)
■福島第一原発事故により日本国内の土壌に降下した放射性セシウムの量~その1~
福島第一原発事故から5年が経過しました。弊社では、西方面(関西、中国、九州、沖縄)や海外のお客様からの問い合わせがきっかけとなり、長野県内の放射線量や放射能を計測するケースがあります。その際に、基礎的な知識として、福島第一原発事故によりどの程度の放射性セシウムが日本全国に降ったのか、質問を頂き回答することがございます。
今回は、既知の資料を基にして、その概要を整理したいと思います。
Q1:そもそも福島第一原発事故前にどの程度降ったのか。
A1:総放出量は、1964年をピークとする大気圏核実験で 770ペタベクレル。
これにより日本の国土は、1964年をピークに土壌1キログラムあたり、約120ベクレルの放射性セシウムが降下しました。
ちなみに、放射性セシウムは自然には存在しません。現在検出できる放射性セシウムのほぼ全ては、人類が人工的に核反応を起こして産み出した物質です。
(参考)
<福島原発事故後の世界を理解するための重要な論文シリーズ>[5]
環境における人工放射能50年:Sr-90、Cs-137及びプルトニウム降下物(2007年版)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2016/08/volume-012-2016.html#paper
311前の土壌のCs137濃度
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/03/311.html
Q2:福島第一原発事故によってどの程度上乗せされたのか?
福島第一原発事故(2011)による放射性セシウム137の総放出量は、15ペタベクレル。
実際に各47都道府県に降下した量は、次の図表に示された通りです。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/images/2016/09/07/cs137.jpg
元データは、文部科学省が毎月公表している降下量です。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2016/09/post-3af0.html
この数字の単位は、ベクレル/平方メートルです。
平方メートルあたりに降った放射性セシウムの量(放射性セシウム137と放射性セシウム134の合算値)を表します。
○東京都では、2cmx2cmの土壌の範囲に、一粒の放射性セシウムが落ちた
1メートルは、100cmですから、1平方メートルは、1万平方センチメートルとなります。
例えば、
神奈川県: 7730ベクレル/平方メートル
東京都: 17318ベクレル/平方メートル
とは、すなわち
神奈川県: 0.77 ベクレル/平方センチメートル
東京都: 1.73 ベクレル/平方センチメートル
となり、1センチメートル角(大人が小指を砂場に差し込んだ程度の面積)
あたりに、1ベクレルの放射性セシウムが降下したことになります。
一方、つくば市の気象研の報告によれば、2011年3月に関東に降った放射性セシウムの直径は、約2.6μm(マイクロメートル)であり、一粒あたり7ベクレルだったと報告されています。従って、東京都では、2cmx2cm(=4平方センチメートル)の土壌の範囲に、一粒の放射性セシウムが落ちている計算になります。
ちなみに、直径2.6μmの放射性セシウムの粒(球体)は、今どこにあるかというと、殆どが、土壌の中の雲母の中の隙間に捉えられています。乾燥した時には土埃と一緒に空中を舞います。
(参考)
<福島原発事故後の世界を理解するための重要な論文シリーズ>[1]
つくば市 気象研による「セシウムボウル」の発見
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2015/09/volume-004-2015.html#paper
<福島原発事故後の世界を理解するための重要な論文シリーズ> [2]
セシウムボウルは土壌中の特に雲母(うんも)岩石粒子に捕まっている
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2015/12/volume-007-2015.html#paper
○降下量と土壌濃度の関係 [ Bq/m^2 → Bq/kg ]
また、この図表
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/images/2016/09/07/cs137.jpg
の見方ですが、放射性セシウムの降下と土壌濃度の関係は、
[ 深さ5cm以下には、放射性セシウムは浸透していないと仮定し、
深さ5cmまで 土壌を採取し]かつ[ 土壌の比重を 1.3 と仮定]した場合に使用できる係数、65 で割った値となります。
例えば、東京都は、17318[Bq/m^2]
ですので、土壌濃度に換算すると266 [Bq/kg] となります。
先ほど「日本の国土は、1964年をピークに 土壌1キログラムあたり、約120ベクレルの放射性セシウムが降下しました。」と書きました。
東京都は、過去最大の降下量の約2倍の放射性セシウムが、福島第一原発事故により降下したことになります。
○降下量と空間線量率の関係 [ Bq/m^2 → μSv/h ]
放射性セシウムによる土壌汚染 276,000 [Bq/m^2] あたりで空間線量率は、+1μSv/h 上昇します。1/100で言うと、土壌汚染 2,760 [Bq/m^2] あたりで空間線量率は、+0.01μSv/h 上昇します。根拠は文科省の測定した2200箇所のデータから求めた式です。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/05/425-bqkg-svh-81.html
例えば、東京都は、 17,318 [Bq/m^2] ですので2,760の約6.3倍 です。
よって、福島第一原発事故が起きる前よりも、降下した放射性セシウムが原因で、+0.063μSv/h程度、空間線量率が上昇したと推定されます。
東京都は、福島第一原発事故前の空間線量率は、約0.06と言われていますので、福島第一原発事故により降下した放射性セシウムが原因で、0.12μSv/hとなったと理解できます。
整理すると
降下量 [Bq/m^2] →( 1 / 65 )→土壌濃度 [Bq/kg]
降下量 [Bq/m^2] →( 0.01 / 2760 )→追加空間線量率 [μSv/h]
新聞報道等で放射線の空間線量率 [μSv/h] が公表されていますが、空間線量を計測した場合は、硬い岩盤由来の放射線と、降雨による放射線による要因と複数の要因があり、判断に迷う場合があります。
福島第一原発事故由来の放射性セシウムの成分を見分けるには、土壌の放射性セシウム濃度を計測する方法がもっとも確かです。
原発事故直後に、東京の土壌に含まれていた放射性セシウム濃度:266 [Bq/kg] の値は、現在の食品の放射能濃度基準:100Bq/kgよりも約3倍ほどの値です。
従って、食品放射能測定器を使うことで容易に土壌に含まれる放射性セシウムの濃度を計測することができます。
最後に、民間のボランティアで、継続的に日本国内に降下した放射性セシウムの濃度を計測するプロジェクトが動いています。
次のURLをご欄頂き、ご賛同頂ける方は、もしよろしければ測定にもご参加頂き、もしくはカンパをお願い致します。
東日本土壌ベクレル測定プロジェクト
http://www.minnanods.net/soil/
(了)
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