【iSHL 実験報告】 国産麦茶飲料の放射性セシウム移行係数抽出率の測定
[2013.6.7]
1.目的
放射性セシウムに汚染された麦茶原料から、お湯で抽出して麦茶を入れた際に、麦茶原料から、麦茶飲料に移行抽出する放射性セシウムの比率(移行係数抽出率)を計測する。
2.方法
麦茶投入量:2リットルのお湯に麦茶を200g投入した。(規定では35g/2L)
抽出時間:沸騰したお湯に麦茶原料を投入し、3分経過後にガスの火を止め、そのまま約30分間放置した。(規定では、2〜3分後に火を止める。放置時間の記載無し。)
フィルタ:スレンレス篩で漉し、麦茶飲料用とした。(*1)
放射能測定装置:ゲルマニウム半導体検出器(TechnoAP社製 TG150B)
3.結果
[A]抽出前
Cs:24.4+-2.8 [Bq/kg]
Cs-137:16.3+-1.5 [Bq/kg]
Cs-134:8.1+-1.3 [Bq/kg]
正味重量:295g
容器:1Lマリネリ
このうち、2/3を麦茶(飲料)抽出に使用。
使用した麦茶に含まれれ全放射性セシウムの放射能値:24.4*0.295*2/3=4.80Bq
Fig.-1: (A) 麦茶 原料
[B]抽出後飲料
Cs:1.8+-0.3 [Bq/kg]
Cs-137:1.0+-0.2 [Bq/kg]
Cs-134:0.8+-0.1 [Bq/kg]
正味重量:1010g
容器:1Lマリネリ
※抽出液は、全部で1500g。
抽出した麦茶飲料に含まれる全放射性セシウムの放射能値:1.8*1.5=2.7Bq
Fig.-2 (B) 抽出後 麦茶飲料
[C]出涸らし
Cs:4.1+-0.8 [Bq/kg]
Cs-137:2.6+-0.4 [Bq/kg]
Cs-134:1.6+-0.4 [Bq/kg]
正味重量:475g
容器:V5(630mL)
麦茶飲料を抽出した後の出涸らしに含まれれ全放射性セシウムの放射能値:4.1*0.475=1.95Bq
Fig.-3 (C) 麦茶出涸らし
4.結論、解析
・移行係数抽出率は、2.7/4.8=0.56であった。
(※ 56% ですので、半分以上が飲料側に移ったということになります。)
・"ベクレル保存の法則"の検証結果:
(B+C)/A= (2.7+1.95)/4.8=0.969
3%程度の精度が今回の実験で得られたと推定される。
<参照>
■お茶移行係数抽出率
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/ishl-a9ed.html
■測定結果公開 麦茶
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/09/post-dff9.html
<検体情報>
エーコープ国内産
六条大麦使用 むぎ茶
賞味期限 2013.7.31
測定結果公開依頼者が、電話でエーコープに問い合わせ済。
ロットすべてが茨城県産の六条大麦。
(*1)ステンレス篩
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/07/ishl-433e.html
■付録
質問を頂きましたので追記します。
twitterより
https://twitter.com/Rosa_centifolia/status/344350246844903425
@Rosa_centifolia きょん さん
川崎市でネット中心に(母数52)給食アンケートとったら、0.03Bq/Kg 37% 0Bq/Kg 35% 1 Bq/Kg 22% 3~5Bq/Kg 4% 0.5Bq/Kg(合算1Bq) 2% でした。
質問と回答:
○質問:麦茶の規定どおりに淹れて、もし今回の移行係数抽出率通りで飲用麦茶に移行したと仮定すると、放射性セシウム濃度が、0.03Bq/Kg 未満となるためには、麦茶原料は幾つ未満であるべきか?
○答え:3 Bq/kg未満。
○計算:
麦茶の汚染 を X Bq/kgとして、
規定の淹れ方は、2Lに35g。
35gに、Csは、X * 35/1000 Bq
これが、0.56移行抽出すると仮定する。
0.56 * X * 35/1000 Bq
2Lの飲料完成とする。
濃度は、
(0.56*X*35/1000)/2 Bq/kg
これが、0.03未満であるためには、
(0.56*X*35/1000)/2 <0.03
X < 3Bq/kg
(記事修正履歴)
2013.6.10 移行係数抽出率、%表記を注記。
2013.8.25 「移行係数」を抽出率に変更。
※移行係数は、一般的に、土壌の放射性物質濃度と、農作物の放射性物質濃度の比率を意味するとのご指摘を頂きました。C-Labのo様ありがとうございました。
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