Cs-134のガンマ線はCs-137の2.7倍、人体への影響が大きい
Cs-134のガンマ線はCs-137の2.7倍、人体への影響が大きい。
■ベクレルとμSv/hを繋げるには
1ベクレルは、1秒間に1回核崩壊が起きる頻度を言い、放射能の単位です。
これは純粋な物理現象。
一方、空間線量率で用いているマイクロシーベルト毎時は、人体への障害の程度を表す単位。
このベクレルとシーベルトを結びつけるのが、「実効線量率定数 1cm線量当量率定数」という係数です。実効線量率定数 1cm線量当量率定数は、核種(元素の種類)を決めると、あらかじめ、いくつになるか決まっている。
今回、原発から放出された代表的な放射性セシウムは以下の通りです。
核種 : 実効線量率定数 1cm線量当量率定数
Cs-137:0.0779 0.0927 [(μSv/h)/MBq]
Cs-134:0.211 0.249 [(μSv/h)/MBq]
実効線量率定数 1cm線量当量率定数とは、百万ベクレル(1MBq)の核種を中心に置いて、そこから1メートル離れた場所での空間線量率(μSv/h)として定義されている。
この定数を使うと次のことが分かる。
・百万ベクレルの放射性セシウム137から1メートル離れた位置の空間線量率は、0.0779 0.0927 [μSv/h]である。
核種の状態を微少な点と仮定した場合、光と全く同じ扱いができる。よってその強度は、距離の2乗に反比例する。
例えば、距離が1/10に近くなると、100倍強くなる。
・百万ベクレルの放射性セシウム137から0.1メートル離れた位置の空間線量率は、7.79 9.27[μSv/h]である。
また、放射線の強度は、放射性物質の量に比例する。
・1万ベクレルの放射性セシウム137から0.1メートル離れた位置の空間線量率は、0.0779 0.0927 [μSv/h]である。
■Cs-134とCs-137
今回、主に2011年3月15日に、東京電力福島第1原子力発電所2号機から放出した放射性物質は、放射性セシウム134と放射性セシウム137が、Bq値にして、ほぼ1:1の比率で放出されたと言われている。(%1)
しかし、注意して上記の定数を見ると、Cs-134の方が、Cs-137よりも、2.7倍大きな値であることが分かる。
つまり、1回核崩壊した時の人体への影響を較べるとCs-134の方がCs-137よりも、2.7倍強いということになる。
何故だろうか。
これは、スペクトルを見ると分かる。
https://www.imeasure.jp/wp-content/uploads/Ge_sample_fig.pdf
Cs-137は、662keVに1本のガンマ線を発生する。
しかし、Cs-134は、605keV, 796keV, の他に、569keV, 802keV, 563keVにもガンマ線を放出する。
ようするに、1回の崩壊で、5種類のガンマ線を同時に放出する134の方が、1回の崩壊で、1種類のガンマ線を出すCs-137より、人体への影響が強いということになるわけですね。
<参考資料>
%1)「1:1の比率で放出された」
放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/04/post-1d72.html
(修正履歴)
2012.11.18 タイトルを変更。村上直行さんに感謝。
2013.2.9 「実効線量率定数」を「1cm線量当量率定数」に修正。
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