Q:初めて導入する測定所のマシンとして、LaBr3はどうでしょうか?
Q:初めて導入する測定所のマシンとして、LaBr3はどうでしょうか?
TechnoAP社 LaBr3シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータ、TS-150Bの評価
1.長所:
(1)LaBr3の最大の特徴は、Cs-137の独立定量
LaBr3は、エネルギー分解能がNaIよりも2倍近く高いため、近隣核種の影響を受けずに(すくなくとも今まで検査した検体で、662keV周辺に疑似核種は存在していません。)
特に、土壌や堆肥などでのK-40の影響や、Cs-134、Bi-214が混在している時であっても、Cs-137の存在のみを独立して検出できます。
NaIシンチは、この芸当はできません。
2.欠点:
(1)検出センサの体積が小さい
LaBr3は、エネルギー分解能がNaIよりも2倍近く高いため、S/Nは稼げます。
また、結晶としての検出効率は、NaIに較べ、約1.3倍あります。(%1)
ただし、大きな結晶を得にくいため、現状入手可能な機種は、1.5インチ品が最大です。
結果、NaIの3インチ機に較べると、10Bq/kg未満では、検出限界値は劣ると想います。
2.5インチNaIと較べるとどちらが検出効率が高いのか、不明です。
きちんと比較したことがありません。
(2)Cs-134誤検出
Laの同位体元素の自己崩壊によるコンプトン後方散乱のがピークが、Cs-134の山、796keV付近にあります。
このため、NaIがCs-134の定量に使う領域(ROI:Resion Of Interest)に使えません。そのため、Cs-134を605keVのROIで定量します。
結果、609keVのBi-214の影響を受けます。
現在のソフトウェアドライバのバージョンでは、Cs-134が無くても、
土壌検査をすると、Cs-134を(Bi-214に依存して)誤検出します。
その場合、Cs-137は、NDなので、放射性セシウムは含まれていないと判断しなければなりません。こうした運用オペレータのスキルが必要です。
ただし、このCs-134誤検出の欠点は、NaIも全く同様です。
NaIは、Cs-134を796keVで定量(A)、605-622keVでCs-134+Cs137を定量(B)
A→Cs-134
B-A→Cs-137
と定量します。
ここに、要因として、
バックグランド、
K-40のコンプトン散乱増加。
の影響を差し引きます。
結果、Bi-214,Tl-208,などの天然核種の影響は回避できません。
3.他
弊社では、LaBr3機は、10時間稼働し、
1.0Bq/kg (1.645σ)
で使っています。
検出された場合のLaBr3でのCs-137の定量値は、
クロスチェックするゲルマニウム半導体検出器のCs-137の定量値に較べ、「常に大きい」です。
結論:
LaBr3 (TechnoAP TS-150B)は、Cs-137のスクリーニングマシンとしては非常に優秀ですが、10Bq/kg以下では、NaI-3インチ機と比較すると、検出限界や、定量精度の観点から、ダントツお勧めの機種とは言い切れません。
別の言い方をするならば、ゲルマニウム半導体との連携定量(クロスチェック)体勢が確保できるのであれば、2台体制の最初の1台として導入は有りだと考えます。
例えば、県所有のGeをクロスチェックに使用できる環境を整えておいて、市民測定所側で、LaBr3機を導入する、というのは理想的な体勢です。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2011/09/2ts150b-9d43.html
(2012-9-10、一ノ瀬@iSHL iMeasure Shinshu Houshanou Laboratory )
参考)
信州放射能ラボFAQ
Q10:高品位コースでの測定結果がセシウム134のみ検出の場合、
どんなことが考えられますか?
%1)
http://speed.sii.co.jp/pub/segg/hp/prod_detail.jsp?mcatID=328&sbIcatID=460&prodID=50415#ProductDetail
http://www.ortec-online.com/download.asbx?AttributeFileId=e0a47196-05ea-4e35-a5a7-7ab39c66f6e1
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