放射能測定のための土壌のサンプリング方法(暫定案)
このblog記事では、乾燥した土壌のサンプリングを推奨していますが、以下の文書では、採取した土壌の半分を、後で、「乾土率を測定するため」に取っておき、試料は乾燥せずに測定する方法を提唱しています。
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No24.pdf
緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法
11章土壌 page36
11.2試料搬入時の注意点
(2)200g以上の表層土壌を用意する。
11.3試料の前処理方法
(3)湿土のまま、約100gを小型容器に入れる。残り100gは、乾土率を測定するため、そのまま保存する。
■土壌のサンプリング方法
(1)直径Φ14cmx深さ10cm
をえぐり取ります。
→これで1.5リットル程度(1539cc)となります。
※所定の円を描き、その円に沿って、垂直方向にえぐり取ります。
所定の円(面積)を守ることで、測定結果から、2つの単位の放射能値を得ることができます。
○ 放射能密度 Bq/m^2
○ 放射能濃度 Bq/kg
※もし、土壌サンプリングを行う際の面積が不明な場合、以下の計算で凡その放射能密度を得ることができます。
※一般的に、土壌の比重を1.3g/cm^3、深さ5cmまで放射性セシウムが浸透したと仮定すると、
放射能密度 (Bq/m^2) = 65 x 放射能濃度 (Bq/kg)
となります。(%1)
※もし、畑や田んぼなど、2011.3.15以降に耕した場合は、 深さ10cmでは足りない場合があります。
※また、稲作など根が張る深さに応じた調査が必要な場合、場合によっては、30cm程度までサンプリングします。この場合、0〜10cm、10〜20cm、20〜30cmと分けて検体を用意することも考えます。
(2)一つの場所の局所的な特徴が心配でしたら、 (雨樋の下など比較的高く出ます) 検査対象の領域を5カ所くらいサンプリングし、生コン用トレーなどでこの5つの検体を良く混ぜ合わせたのち、所定の量(1リットル)を検査対象の検体として送付します。
5カ所のサンプリング方法は、
中央 ・・・1カ所。
4角(すみ)・・・4カ所。
※サンプリング位置は、角(すみ)から中央までの間の角から10%程度の場所。
(3)十分乾燥させます。
複数枚の新聞紙を敷いた上に検体を拡げて数日乾燥させます。
土壌の濃度値(Bq/kg)の真値を得るためには、土壌をできるだけ乾燥させます。
急いでいる場合、水分を含んだままでも測定は可能です。ただし、濃度値は(検体重量が水分を含んで大きくなるため)低めに出ることを予め承知してください。
土壌が水分の蒸発によりどの程度軽くなり、結果放射能値が減少するのか。現在実験調査中です。
■写真1 土壌放射能測定の道具 【Φ14cmマーカー】
別名 鉢植え
■写真2 土壌放射能測定の道具 【コーンサンプラー】
別名 球根植え
このコーンサンプラーは優れています。深さ方向に5cm、10cmに目盛が付いており、深さの目安となります。15cm深さまではこの道具で十分機能します。
■写真3 深さ5cmだけ、サンプリングした様子
■写真4 土壌放射能測定の道具 【土壌ミキサー】
別名 生コンパレット
■写真5 土壌放射能測定の道具 【コーンサンプラー】
別名 球根植え
ご覧の通り、5cm、10cmの位置に目盛がある。
取っ手のオーバーハング部が15cmで目安になる。
■追記:2012.8.2
土壌のサンプリング方法は、放射能測定の手順資料でも詳細は述べられておりません。
緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための資料前処理法
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/main_pdf_series_24.html
(第11章 土壌)
ですので以下は、私見です。
土壌の放射能濃度を測定する目的は、311後の福島第1原発からのフォールアウト(空からの降下)ですから、本来、放射能密度(Bq/m^2)で評価されるべきものと考えます。
Bq/kgという表記は、既に汚染されてしまった土壌を均一に耕してしまった後、農作物を得る場合に、農作物の種類毎の移行係数(土壌の放射性物質濃度に対する、収穫農作物の放射性物質濃度)を評価するための値(測定方法)だと考えます。
横浜市民測定所の本田先生の資料に有るとおり、
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/08/2012621-9b70.html
放射能の濃度は、土壌の深さ方向で分布が異なります。
どの深さまで採取するかで、結果は、簡単に2倍程度は変わると思われます。
ですので、blogに記載しましたとおり、放射能密度(Bq/m^2)を正確に得るために、決まった直径で円筒状に深さ方向にえぐり取ることが大切だと考えます。
そうすることで、「これよりも深くは放射性セシウムが浸透していない」と思われる深さまで採取すれば、再現精度の高い、放射能密度(Bq/m^2)を得ることができると思われます。
放射能密度(Bq/m^2)をまず正確に得られれば、後は、浸透深さや深さ方向の放射能濃度を推定することで、Bq/kgの推定や、植物への移行の推定が可能となります。
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%1)放射能密度
Bq/m^2の単位から、更に、MBq/km^2の単位に変換するには、下記の通りです。
もし、測定結果が、
放射能濃度:10Bq/kg であった場合、
密度は、650Bq/m^2であると想定できます。
MBq/km^2の単位に変換するには、
この数字のまま、単位のみを変更すれば良いです。
つまり、
650Bq/m^2=650MBq/km^2
文部科学省がそのホームページで公開している、各自治体県庁所在地での2011年3月の1ヶ月での降下量は、この単位となっています。
例えば、降下量が、150MBq/km^2であった場合、
150Bq/m^2となり、
2.3Bq/kg相当降下した、と計算できることになります。
日本全国15カ所での2010年時点での、大気圏核実験の名残が、6Bq/kgですので、およそその半分弱、降下したことになります。
大気圏核実験成分は、放射性セシウム137のみです。
一方、東京電力福島第1原子力発電所由来の放射性セシウムは、Cs-134とCs-137が混在します。これらの現時点での比率、並びに、今後5年、10年でどのように減衰するのかを計算する道具があります。「放射能計算機」
google で、 [ CalcCs.exe ]で検索してください。
携帯電話で、本日の放射能比率を表示するWeb版もございます。
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コメント
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風乾により214Biのピークがどう変化するかが興味深いです。
投稿: 前田幸宏 | 2012年7月18日 (水) 23時44分