シンチとゲルマを比較
「シンチ」と「ゲルマ」の比較を行いました。
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「シンチ」とは、シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータのことです。
今年4月から施行された政府基準の放射能測定には、鉛遮蔽が必須です。
鉛遮蔽されたシンチのことを一般的に「ベクレルモニタ」と呼んでいるようです。
・・・
「ゲルマ」とは、ゲルマニウム半導体検出器のことです。
今回の検体は、弊社で販売している【 ベクレルフリー米 】。
かつて、シンチで、Cs-134に山が出たため、出荷を見合わせた検体です。
出荷しなかった幻のお米です。(%1)
今回、ゲルマニウム半導体検出器で再度検体を計測したところ、
ビスマス214 (Bi-214)
タリウム208 (Tl-208)
をCs-134として「誤検出」していたことが判明しました。(%2)
■シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータ
テクノエーピー社 TS150B
シンチレーション結晶:LaBr3(臭化ランタン)
■ゲルマニウム半導体検出器
テクノエーピー社 TG150B
今後、弊社のベクレルフリー米は、シンチで「山」が出た場合は、ゲルマで追試験します。
%1)弊社が出荷するベクレルフリー米は、放射能測定結果を全製品に標準添付します。そのため、ベクレルモニタの測定結果に、疑わしい「山」が現れた場合は、安全側に倒して出荷を行いませんでした。今回、ゲルマニウム半導体検出器を導入したことで、放射能の由来を明示し、事実に即した測定結果報告ができるようになりました。引き続き、安心、安全なお米を提供する所存です。
%2) LaBr3結晶は、一般的に使われるNaIに比べて、光子エネルギー分解能が約2倍高いため、「Cs-137を単独で独立定量できる」点が一番の強みです。
しかし、NaIでCs-134の定量に使われる796keVの光子エネルギー領域が、Laの放射性同位元素によるバックグランド(後方コンプトン散乱)に隠れて見えません。(1万ベクレル/kgを越える焼却灰などの検体では問題なく796keVにピーク確認されます。)
そのため、テクノエーピー社のLaBr3シンチ機TS150Bは、3本有るCs-134光子エネルギーピーク(569, 605, 796 keV)(%3)の内、605keVを使って定量しています。この領域に、Tl-208(583keV)と、Bi-218(609keV)が混在することが今回、良く理解できました。
・・・
なお、NaIシンチでの課題は、以下のblogに非常に子細な解説が有ります。
ぜひ、ご覧下さい。(かなり難解ですが印刷してじっくり読解してください。)
http://kodomira.com/information/pb214_bi214/
NaIでは、LaBr3に比べて光子エネルギー分解能が約半分になるため、Cs-137を独立定量できません。
Cs-134(さらに、Bi-214)の影響を受けるため、土壌や水の検査において、低放射能値の場合は、オペレータの判読技量が問われます。
%3)3本有るCs-134光子エネルギーピーク(569, 605, 796 keV)
Cs-134のガンマ線リスト:http://ie.lbl.gov/toi/nuclide.asp?iZA=550134
Decay data search WWW Table of Radioactive Isotopes は、
はこのBlogの左上のリンク集 iSHL にリストされています。
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