放射性セシウム 425 Bq/kg の土壌汚染で空間線量率は、0.1μSv/h上昇する。
■目的:土壌の汚染と空間線量率の関係を調べる。
■結論:放射性セシウムに汚染された 425 Bq/kg の土壌にて、空間線量率は0.1μSv/h上昇する。
425 Bq/kg の土壌汚染で、0.1μSv/h上昇する。
■基本データ:
文部科学省による放射線量等分布マップ
(放射性セシウムの土壌濃度マップ)の作成について文部科学省 原子力災害対策支援本部
モニタリング班
資料第7-1-1号
別紙7 グラフ:空間線量率と土壌の核種分析結果の関係についてより、
X軸:空間線量率(μSv/h)
※計測高さ1m
Y軸:放射性物質の単位面積あたりの放射線量(Bq/m^2)
の相関が得られている。
y=276008*x
R^2=0.7557
すなわち、
主たる核種がCs134とCs137とした場合、
相関係数:0.7557の精度で、次の式が成り立っている。
[ 276 KBq/m^2 = 1 μSv/h]
□計算
上記の式の意味は、
「1平方メートルあたり、放射性セシウムが 27万6千ベクレル撒かれているとその場所の高さ1メートルでの空間線量率は、1μSv/h 上昇する。」
となる。
単位cm^2あたりに変換すると、
「1平方センチメートルあたり、放射性セシウムが 27.6ベクレル撒かれているとその場所の高さ1メートルでの空間線量率は、1μSv/h 上昇する。」
仮定:土壌の比重を1.3 g/cm^3 とする。
{x65倍する、という一般説は、比重換算すると1.3となる。}
深さ5cmまでの土壌を計測するとすれば、
1cm^2x深さ5cmの土壌の重さは、
5 * 1.3 = 6.5 g
土壌6.5gにて、27.6ベクレル上昇。
土壌1kgにて、27.6*1000/6.5 = 4246ベクレル上昇。
■結論
4246Bq/kg の土壌にて、1μSv/h上昇。
425 Bq/kg の土壌にて、0.1μSv/h上昇。
■応用
空間線量率を0.1μSv/h精度で正確に測るには大変だ。
花崗岩由来のK-40放射性物質によって、例えば長野県塩尻市は、0.08μSv/hが、311前からの値。
空間線量率が、0.08μSv/hから、0.18μSv/hになったことを正確に判定するにはそれなりに技術と時間がかかる。
一方、425 Bq/kg の土壌の放射性セシウム汚染を測ることは、核種判別できるベクレルモニタがあれば、遙かに容易で精度が高い。
現在、50カ所以上に及ぶ全国の市民測定所に普及し始めたベクレルモニタを使えば、425 Bq/kgの汚染土壌であれば、数分で精度の高い結果が出る。
K-40の核種分離できるベクレルモニタを使って、まず、土壌の放射能を測定を推奨する。
■関東の汚染現状
長野県内のホームセンターで、販売されている、栃木県産、群馬県産、の堆肥を計測し、このblogでも堆肥の放射性セシウム合算値の濃度を報告した。(%1)
およそ 100Bq/kg程度汚染されている。
[425 Bq/kg の土壌にて、0.1μSv/h上昇。]
この式から、堆肥を製造している現場での労働者は、約0.025μSv/hの被曝をしている。
塩尻市であれば、0.08μSv/h が0.105μSv/h に成る程度の空間線量率の上昇だ。
計測誤差として曖昧にされているのだろうが、土壌を核種判別できるベクレルモニタを使って測れば直ちに放射性セシウム濃度は、判別できる。
土壌を測ろう。
■追記 2012.6.4
千葉市の市民測定所の方からblog記事のご紹介を頂きました。感謝です。
土壌の放射能濃度と同じ場所での1メートル高さでの空間線量率の測定結果の統計的処理。
花見川区3公園の土壌放射能濃度測定結果
http://protectchildren311.blog.fc2.com/blog-entry-370.html
実測値から求めた漸近線の式:
土壌放射能濃度 [Bq/kg] = 5994 * 空間線量率 [μSv/h]
つまり、
5994Bq/kgの土壌汚染で、空間線量率は、1μSv/h上がっている。
599 Bq/kgの土壌汚染で、+0.1μSv/h 空間線量率上昇。
■学習院大学田崎先生の考察:
(100m^2の土壌)
1MBq/m^2 <--> 3.4 μSv/h
つまり、
294 KBq/m^2 = 1 μSv/h
この値は、文科省が2200カ所の実験から求めた漸近線の式:
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/05/425-bqkg-svh-81.html
276 KBq/m^2 = 1 μSv/h
と7%精度で合致している。理論値が実測値を精度良く推定している良い例だ。
□考察
土壌のサンプリングをする際に、Bq/m^2の値も得られるように、決まった面積でサンプリングするとx65倍するなどの換算が不要となり、ダイレクトに理論値(田崎先生の式)と比較できる。
弊社でも、土壌は、Φ120mmの円柱状のコアサンプリングを行っている。
深さは、H1=0〜50mm、H2=50〜150mmの2種類だ。
■追記 2012.6.4 その2
(千葉県の市民測定所から新たにサイトを教えて頂きました。)
みまもりファームの栽培日記
「空間線量率-セシウム土壌濃度の散布グラフ」を作成しました
2011/09/07
http://hamanora.blog.ocn.ne.jp/kaiin02/2011/09/post_8abc.html
y=330398 * x
330398Bq/m^2 <--> 1μSv/h
(ichinoseメモ)
33 Bq/cm^2 <--> 1μSv/h
1mSv/yなら、0.114μSv/h
3.76 Bq/cm^2 <--> 1mSv/year
%1)堆肥 牛ふん 有機質肥料 の放射能値測定結果 2012年4月 9日 (月)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/04/post-7a70.html
この記事の初出:
空間線量率 μSv/h の数値で、直接 チェルノブイリと比較する。
http://d.hatena.ne.jp/scanner/20110920/1316524394
(2011.9.20)
(記事修正履歴)
20130828 修正[花崗岩由来のK-40放射性物質によって、]
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コメント
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信州放射能ラボさん
こんにちは。
市民測定所・うらわ実行委員会の木下です。
私も、空間測定器から、簡易にBqが推測できないか試してみました。
日本アイソトープ協会製標準ガンマ線源Cs-137(公称10KBq、経年を勘案すると8511Bq)を点線源と見なし、最大感度の点を測定点としました。
そうすると、1uSV=2295Bq/sが導けました。
単位に重さとは面積の概念はありませんが、結構近い値(半分ですが)になるものですね。
おそらく線源とセンサーの大きさが等しくない事も関係があるかと思います。係数については、自作の際に一番分からなかったところでした。
[425 Bq/kg の土壌にて、0.1μSv/h上昇。]の公式は、重宝させていただきます。
都内及び埼玉県内で0.3uSv/hを超える高線量を計測した地点(最高0.5uSv/h、地表面、東京と千代田区霞が関)がありますので、機会があれば、土壌測定してみたいと思います。
貴重な情報ありがとうございました。
投稿: 市民測定所うらわ | 2012年5月31日 (木) 10時11分
木下さん コメントありがとうございます。
今回は、文科省の2200カ所の空間線量率(μSv/h)と汚染濃度(Bq/m^2)の相関係数と、土壌の密度(1.3g/cm^3)と浸透深さ(5cm)を仮定して、算出しました。
計算過程に間違いは無いと想いますが、上記仮定が前提のため、数字だけが一人歩きするリスクは伴います。
・・・
以前このblogで記事にした通り、核種が決まると、100万ベクレルの核種から1メートル離れた場所での、空間線量率(1cm線量等量)が定義されています。
弊社での、点線源からの距離と空間線量率の計測結果も1%未満の精度で良く一致しました。
・・・
まだあまりじっくり考えていませんが、点線源ではなく、面線源であるとして、計算すれば、理論値が計算できるはずです。
これは、点「光源」による照度と、面「光源」による照度の話と同じなので、照明工学の計算で良いと想われます。
投稿: 一ノ瀬 | 2012年6月 3日 (日) 03時25分