シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータの放射性セシウムの定量のしくみ
引き続き、オペレータ向けの話題です。
NaI(Tl)シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータは、放射性セシウムの合算値(Cs-134とCs-137の合わせた値)をどのように計測しているのでしょうか。
■基礎データ:http://ie.lbl.gov/toi/radSearch.asp
Cs-134の光子エネルギースペクトル ピーク(1%以上)
563.246 keV 8.35%
569.331 keV 15.38% **
604.721 keV 97.62% **
795.864 keV 85.53% **
801.953 keV 8.69%
1167.968 keV 1.789%
1365.185 keV 3.014%
Cs-137の光子エネルギースペクトル ピーク
661.657 keV 85.1% **
■NaI(Tl)シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータで得たガンマ線スペクトルの代表事例
この装置(TechnoAP TN-300B、NaIΦ3インチx3インチ)では、
赤い山のところで、Cs-137を定量し、
マゼンタ色の山のところで、Cs-134を定量していることが判ります。
赤い山は、661.657 keV
マゼンタ色の山は、795.864 keV
の位置を意味しています。
本来は、Cs-134が出すスペクトルの内、
604.721 keV が最も強い(97.62%)ので、ここを定量すれば感度が高くなるのですが、Cs-137(662keV)と山の裾野が重複してしまうことと、U-238系列由来のBi-214(609.312 keV)が混ざるリスクがある、ことから、もっと高い方に離れたCs-134の別のスペクトル 795.864 keVを使っています。
■LaBr3シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータで得たガンマ線スペクトルの代表事例
実測したデータ:
こちらは、LaBr3の光エネルギー分解能が、NaIに比べて、高いため(3.5% at 662keV)
うすい赤色(ピンク)の山は、604.721 keV でCs-134を定量、
こい赤色の山は、661.657 keV でCs-137を定量しています。
605keVと662keVの山が腹筋だとすると、(なんちゅう例えだ)
NaIは、くびれが目立たず、
LaBr3は、腹筋のくびれが目立つって感じですね。^^)
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