放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率
放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率
またまた、オペレータ向けの話題です。
放射能測定結果が、ベクレルモニタに表示された時に、
その放射能の値がホントに正しい値かどうか、を判断するためのチェックポイントの1つとして、放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率に注目する必要があります。
理由は次の3点です。
1)福島第1原発由来の放射性セシウムは、放出された時点で、所定の比率で放出されたと言われています。
その結果、半減期をつかって、測定した年月日時点でのCs-134:Cs-137比率を計算することができます。
この計算により予測される比率に比べて極端に異なるようであれば、測定値を疑う必要があります。
2)Cs-134の放射能値を独立定量し、Cs-137の放射能値は、550〜700keVまでの全ガンマ線量の定量値から、Cs-134の値を引き算することで、Cs-137の放射能値を定量する「アルゴリズム」を使って算出するケースがあります。
この方法を使った場合、Bi-214(609keV)などが混入している場合、Cs-137の放射能値が、多めに出ることになります。
3)土壌などの放射能値を計測した場合、Cs-134は、半減期が2年のため、10年もすれば、殆ど核崩壊で無視できる程度の放射能値となりますが、Cs-137は、半減期が30年のため、150年経過しても、まだ1/32は生き残っています。
つまり、Cs-137の放射能濃度がどのくらいあるのか?が長期的に見た場合、圧倒的に重要な数字となります。
■LaBr3シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータで得たガンマ線スペクトルの代表事例
LaBr3シンチで得た焼却灰の比率は、次の通りでした。
Cs-137: 9174.38
Bq/kg
Cs-134: 6411.98
Bq/kg
比率は、1:0.6989
ちなみに、2011.3.15時点での放出比率を1:1と仮定した場合の理論値(*1)は、
測定した、2012.2.18にて、
1:0.7469
CalcCs.exe (programming by かにこむ & produced by iSHL)
測定所オペレータ必携の放射性セシウム計算機です。
■携帯電話 スマホ向け:
http://www.kani.com/ycrms/CalcCsWeb/■PC (Windows)向け:
http://www.kani.com/ycrms/CalcCs/
一ノ瀬memo)無料ソフトウェア(Windows用)です。私が基本設計しました。いろんな使い方ができます。任意の日付のセシウム比率を求めるだけでなく、「今日測定した土壌の放射能値が、数年後いくつになるか。」などの計算が可能です。
Web版 携帯電話用(ただし今日の比率 Cs-134/Cs-137 のみ。3/15を選ぶ。)
http://www.kani.com/ycrms/CalcCsWeb/
■参考文献
(1)河田 燕@産業技術総合研究所、山田 崇裕@日本アイソトープ協会
原子力事故により放出された 放射性セシウムの 134Cs/137Cs 放射能比について
http://www.jrias.or.jp/member/pdf/201205_HOUSYASEN_RIJYUKU_KAWADA.pdf
memo:放射性セシウム134と放射性セシウム137の比率に関する考察の論文。1:1になる必然性は無い事。Xe-134が安定で有る幸運など。
(2)千葉豪@北海道大学
http://nms.qe.eng.hokudai.ac.jp/nuclear_safety/main.pdf
福島第一原発構内における土壌中の放射能測定データを用いた検討
- Cs-136/Cs-137、Te-132/Te-129m 放射能比 -(改訂 12)
千葉豪@北海道大学、平成 23 年 7 月 9 日
memo「Cs-134と-137の放射能濃度がほぼ同程度であることことから、一定出力の燃焼計算を行い、Cs-134と-137の放射能が同程度となるような燃焼期間とした。」
(3)小森昌史、小豆川勝見、野川憲夫、松尾基之 @東京大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku/62/6/62_475/_pdf
134Cs/137Cs放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価,分析化学,62(6), 475, 2013
(記事修正履歴)
2013.8.19 小豆川先生の論文を追記。
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