■ 実験結果の解釈 その1
1万5千ベクレル/kgの焼却灰350gを使って、実験をした。
詳細:1万5千ベクレル/kgの焼却灰にてGM管とシンチを比較する
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/02/1gm-ea30.html
第1の実験目的は、測定所に宅配送付されてくる測定試料の受け入れ基準を決めるためだ。所定の放射能を超えている場合は、箱を開梱せずに受け取り拒否をするための基準値を決めようと思う。
第2の実験目的は、サーベイメータでどのくらいの少ない放射能までを計れるのか。概算を把握するため。
(放射能はベクレルモニタもしくはゲルマニウム半導体検出器で計測することとして、そのスクリーニング(=フルイ分け)のための前準備として。)
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まず、ガンマ線タイプ(TCS-172B)。
これは、全国の自治体で空間線量を計測するために使われているモデル。
塩尻市のバックグランド:0.09μSv/h
15KBq/kgの焼却灰:0.37μSv/h
つまり約4倍の空間線量だ。
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次に、β線タイプ(TGS-146B)。
これは、長野県松本市の給食センターの受け入れ検査用に導入され、現在では、安曇野市や富士見町の学校給食の受け入れ検査にも導入されているタイプだ。
バックグランド:76.8 ±10.04 CPM
15KBq/kgの焼却灰:571.9±11.9 CPM
つまり、約7.5倍の線量だ。
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最初のガンマ線タイプの測定回数は今回、複数回取得していないので、評価は改めて行うとして、β線タイプでいったいどの程度まで検出可能なのかを検証してみたい。
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○仮定:バックグランド値の標準偏差の3倍を超えた線量は、有意である。
測定の定石として、まず上記仮定で計算をする。
標準偏差とは、測定対象となる自然界の物理現象や、測定による誤差を含めて測定値の頻度分布(ヒストグラム)をグラフにした時に、ガウス分布(正規分布)という曲線の形状になることを前提にした測定値のバラツキの度合いを示す指標だ。
その標準偏差の±3倍の範囲に、「真の値」が99.7%の確度で含まれる、という統計上の測定結果の判定方法が3σ(さんしぐまと読む)。
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文章だとわかりにくいけど、大学入試の時に、偏差値80を超える人をみなさんはあまり知らないだろう。同じく、偏差値30を切る人にあまり会ったことは無いだろう。なぜなら、1000人に3人の割合だからだ。つまり、偏差値 30〜80の中に、大半(99.7%)の人が居る。
というと判りやすいだろうか。
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○仮定2:焼却灰の放射能とβ線のサーベイメータの値は比例する。
今回の実験は、一度だけであり、いくつかの検証が必要である。
例えば、
1)TGS146Bの値は、放射能の濃度(1万5千Bq/kg)に比例するのか。
2)TGS146Bの値は、灰の放射能総量(5.6KBq)に比例するのか。
3)測定器を当てた面積のみに限定されかつ、所定の深さに含まれる体積の中の放射能総量に比例するのか。
などである。
今回は、とりあえず1)を前提とする。(■留意)
○計算
・放射能1万5千Bq/kgの焼却灰は、572CPMであった。
・BG(バックグランド)は、76.8CPMであった。
・この差は、焼却灰の放射能1万5千Bq/kgに由来すると仮定する。(■留意)
→ 15,000/(572-76.8)=約30(Bq/kg)/CPM
つまり、30Bq/kg放射能濃度が上がる毎に、TGS146Bのカウントは、1CPM増える計算だ。
次に、今回の測定方法の検出限界値を求める。
バックグランド:76.8 ±10.04 CPM
X Bq/kgの焼却灰:X ± 11.9 CPM
と成ったときに、Xの最小値はいくつから意味があるか。
安全を見るならば、
まず、76.8 + 3 * 10.04 だろう。
となると、約107CPM
焼却灰も10回計測するとして、平均値の−3σが107CPMを超えれば、確実に放射能を検出したと断言しても良いだろう。
となると、結局、76.8 ±10.04 CPMというバックグランドに対して、
6σを足した値。
つまり、+60CPMとなる。
「30Bq/kg放射能濃度が上がる毎に、TGS146Bのカウントは、1CPM増えている」
ので、定量下限(量的に有意な検出限界)は、1800Bq/kgとなる。
もし、BGの平均値と、焼却灰の平均値の山が3σ離れていれば、十分有意差(検出限界)だと見なし、これを検出限界と仮定するならば、900Bq/kgとなる。
○結論:
TGS146Bを用いて、放射能を計測する場合、検出限界は、900Bq/kgと推定される。
また、確実に有意であると断定できる放射能値は、1800Bq/kg以上であると推定される。
注意:
本考察は、実験結果までは事実であるが、そこから演繹(計算)を行う段階でいくつかの仮定を置いた。
上記文章で、(■留意)としたところ。
仮定が間違っていれば結論も間違う点を留意されたい。
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