ゲルマニウムの何がスゴイのか その1
弊社で、ポケットガイガーKITの組み立てワークショップを開催している。
PocketGeiger ワークショップのご案内
決まって有る問い合わせが、「自宅の土壌や野菜の放射性セシウム濃度」を測りたいという話。
でも、残念ながら、サーベイメータや線量計で食品の放射能は計測できない。
なぜか。
2つ理由がある。
[1]鉛で遮蔽しないとイケナイ。
弊社の実験でも、ポケットガイガーを2000Bq/kg近い放射性カリウムの人工肥料に近づけたとしても、線量計の値は、空間線量率にて 0.07μSv/hが、0.14μSv/hになるかどうか程度。
しかも普段から、長時間計測を行い、平素の線量率の値がいくつくらいかを判っていないと、とてもじゃないが、判定できない。2000ベクレル/kgでもその程度だ。
しかも、最初の、0.07μSv/h ってのは、(長野県塩尻市の場合は)殆どが、地面の花崗岩の黒い粒、雲母に含まれる放射性カリウム(40K)由来であると推定される。
食材に近づけた放射線の線量計は、食材からのガンマ線を測っているようでいて、じつは、地面や空間からやってくるガンマ線も受けてしまう。
なので、センサ部分を(食材も含め)丸ごとぶ厚い鉛で遮蔽しなければならない。
そうしないと、政府基準値以下の食品の放射能を測定できない。
[2]放射性カリウムか、放射性セシウムかを見分けることはサーベイメータにできない。
放射性セシウムと放射性カリウムを見分けるには、ガイガーミュラー(GM)管や(ポケットガイガーや、エアーカウンターなど)シリコンフォトダイオード式では原理的に不可能だ。核種(原子の種類)を見分けることができないからだ。
核種を見分けるためには、次のどちらかを使うことになる。
a.シンチレーション式ガンマ線スペクトロメータ
NaI(Tl)やら、LaBr3などのシンチレーター(つまり、蛍光体だ)結晶と高感度光検出センサの組み合わせからなる測定器。
b.ゲルマニウム半導体検出器
じつは、自治体が毎日、空間線量を計測している、空間線量率の測定装置も、シンチレーション式ガンマ線検出器だ。でも、エネルギースペクトル分解できないので、放射性カリウムか、放射性セシウムかを見分けることはできない。見分けるためには、検知したガンマ線の光子エネルギーがいくつかを定量するしくみが必要となる。それが、ガンマ線「スペクトロメータ」である。
例えば、放射性セシウム137は、662keVという固有の光子エネルギーを持っている。
(つづく)
■関連記事
ゲルマニウムの何がスゴイのか その1
ゲルマニウムの何がスゴイのか その2
ゲルマニウムの何がすごいのか (番外編)
{記事修正履歴}
2012-4-13 関連記事を追記。
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