濃度計になるか

2019年6月12日 (水)

イメージスキャナは濃度計になるか? その5 ICCプロファイルを作る編

ICCプロファイルを作る

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イメージスキャナを濃度計(反射/透過)として使うためのアプリ。
iMeasureScan (あいめじゃーすきゃん)入門版。


市販のイメージスキャナを使って、反射率/透過率を16bit(65535階調)で数字を得ます。そのために最も基本的な機能として「ガンマ1.0」で動かすためのアプリです。ガンマ1.0でスキャナを動作させることで、センサが捉えた光量に比例した値を16bitで得ることが可能となります。


 
その昔 印刷用のスキャナがアナログ式で、
スキャンした値から直接印刷用の網点を作っていた時代、
そのシステムはひとかたまりの コピー装置だった。
 
〜〜〜
やがて、A/Dコンバータや、メモリーが安価となったことで、
一旦スキャンしたデジタルデータを保持できるようになると、
ディスプレイや、プリンタや、電送先の別の装置に、画像データを渡せるようになる。
 
〜〜〜
そうすると、色分解した Red Green Blue のデジタルデータとは何なのかが問題となる。(厳密にはCMYKでしたよね。当時の印刷用のドラムスキャナ)
 
これはテレビジョン放送時代には全く問題にされなかった議論だった。
 
何故なら、リアルタイムの放送規格は、スタジオ撮影カメラのガンマ特性と蛍光体の色特性のみを決めれば、
それに合わせて受像機を作るだけのことだったからね。(NTSCやSECAMなどがそれだ。)
 
〜〜〜
でもスキャナの場合は、一旦デジタルデータで置く際に、何らかの標準が必要になった。
 
1931年に、人間の目を定量化した。それがCIE1931で、
色は、XYZという直交座標系の点として表現できると仮定された。
そこで、スキャナのデジタルデータも、一旦この、絶対色(XYZ)に置き換える方法が考え出された。
個別のスキャナが得るRGBは、ある意味、方言だ。
その方言を、標準語である(XYZ)に置き換える、インタープリター(翻訳機)とも言える。
そうすれば、
スキャナRGB<>XYZ<>ディスプレイRGB
とか、
スキャナRGB<>XYZ<>プリンタCMYK
とか、
【色】変換が容易だ。
 
この考えを最初に発明したのが、ドイツの印刷会社 ライノタイプヘル(現在ハイデルベルグ)
そして、その考え方をOSに採用したのが、AppleのMacintosh
当時、Color Sync.
Adobe のPhotoshopもVersion 5.0.2くらいからこのプロファイルの考え方をシステムに組み込み、利用が始まった。
現在は、WindowsOSと共通化されていて、デバイス固有の方言色記述ファイルのことを ICCプロファイル(アイシーシープロファイル)と呼ばれる。
色再現システム全体の機能を、カラーマネージメントと呼ぶ。
〜〜〜
 
さて、イメージスキャナを使って、色彩色度計や、濃度計に使おうという話だ。
 
このスキャナ個別のICCプロファイルを作ってしまえば、そのスキャナを使って濃度計、色彩色度計になる、ってことになる。
 
でも、困るのは、テストチャートと、正確に計測された XYZの値の計測値。
これが無いと、ICCプロファイルは作れない。
そこで、当時は、ICCプロファイルメーカー、というキットが発売された。
モナコカラーから当時3万円ほどだった。
中身は、プロファイル作成プログラムと、現物のカラーテストチャート(反射/透過)とそれらの計測値データだ。
 
〜〜〜
最近は驚くことに、イメージスキャナを購入すると、この一式が標準で付いてくる。
 
EPSON GT-X980
A4サイズの透過フィルムもスキャンできるモデルだ。
 
 
さっそくやってみた。
 
ところが、が〜ん。こんな感じ。
 
まだ、X-RiteのWebサービスが、EPSONのGT-X980の最新モデルに添付されるチャートデータに追いついて居ないようだ。
 
2017.12.1が最新。
スキャナに添付されていたチャートは、2018.9.1
とほほ。

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2019年5月25日 (土)

スキャナは濃度計になるか? その4

以前、スキャナは濃度計になるか? というテーマで

反射率、透過率の検証をしたことがあります。

久々に今回はその続き、 その4 です。

 

スキャナは濃度計になるか? 

 

その3 2010年8月23日 (月)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/--ta.html

 

その2 2009年1月17日 (土)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2-96f1.html

 

その1 2009年1月17日 (土)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-c1f3.html

 

ISO等で濃度の計測法が定義されています。

45度円錐の照明にて垂直反射光を計測する。

垂直照射光にて、45度円錐反射を計測する。

垂直照明光にて、透過光を積分球で捉えて計測する。

など照明とセンサの幾何学的な配置が定義されています。

 

イメージスキャナはこのいずれの幾何学配置にも属しません。

ただ、濃度計と同等の、黒基準、白基準補正のキャリブレーションを内蔵しています。

イメージスキャナでは、この機能をシェーディング補正と呼んでいます。

 

シェーディング補正機能を持たない、カメラ撮影では以下の変動要因があり、測定値に誤差が生じます。

 

(1)光源の照射強度

(2)レンズの絞り、カメラの感度、シャッター速度

(3)光源の照明ムラ(場所による)

(4)レンズの周辺減光

(5)センサの画素毎の感度ムラ

 

~~~

 一般的に濃度計は、その計測法の原理から、1点のみを計測する仕組みです。そのため、濃度ムラを面状に解析したいとき、点群として計測表示する以外なく、細かく観察したいときには、膨大な計測時間がかかります。

 その点、イメージスキャナは、高い光学解像度にて、一度に面状のムラを可視化することが可能です。ただし、濃度計と異なる「癖」を留意して使う必要があります。

〜〜〜

今回は、白の中に黒がある場合。(雪の中のカラス)

もしくは、真っ黒の中に、白がある場合。(闇夜の白うさぎ)

で生じる現象(問題点)を考えます。

今回の考察は、ガラス表面で生じる表面反射の影響です。

図をご覧ください。(詳しい解説は後ほど改めて。)

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2010年8月23日 (月)

スキャナは濃度計になるか? その3

このテーマの続きです。

 

■実験方法

 

透過型ステップタブレット(15段、最大OD値 2.85 )

 

イメージスキャナ:EPSON ES-10000G

 

オプション:透過原稿ユニット ESA3FLU3

 

ソフトウェア:iMeasureScan

 

    Densitometor : ON

 

    16bitGray

 

    DropOut:Green

 

    解像度:300ppi

 

エドモンドのステップタブレットの長期的供給が不可となったため、富士フィルムイメージテックのタブレットを購入しました。ただし、透過モード用は、最大濃度が2.85です(15段にて)
http://fujifilm.jp/business/material/testchart/step/

 

http://fujifilm.jp/business/material/inspection/testchart/step/index.html

 

測定値付き:@6,000- (添付データはX-rite 310の計測データでした。)

 

測定値無し:@5,000-

 

換算OD値 = - LOG ( 16bit平均値 / 65535)

 

■実験結果
ステップタブレット読み取り(OD値)       

 

        No.1(1回)       
  OD値     16bit平均  StdDev    換算OD値
1    0.04    57271     457.16     0.059
2    0.26    32835     372.63     0.300
3    0.46    20251     292.40     0.510
4    0.66    12093     288.32     0.734
5    0.85    7539.7     153.02     0.939
6    1.04    4684.0     108.12     1.146
7    1.25    2914.9     78.559     1.352
8    1.45    1607.9     57.735     1.610
9    1.64    992.74     44.461     1.820
10    1.85    607.29     36.558     2.033
11    2.03    388.93     30.749     2.227
12    2.25    233.02     26.972     2.449
13    2.46    144.11     24.894     2.658
14    2.68    91.115     23.593     2.857
15    2.88    61.093     21.371     3.030

 

 

 

■グラフ

 

X軸:ステップタブレットをX-rite 310で計測したデータ

Y軸:イメージスキャナで得た値から換算したOD値

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/densitometor_vol31.png

 

■解析

 

近似式:Y= 1.0625X + 0.0374, R^2= 0.9991

 

 

 

■校正

 

近似式を使ってスキャナの値を校正する。

 

X = ( Y - 0.0374) / 1.0625

 

OD値_cal = ( 換算OD値 - 0.0374)/1.0625

 

OD値    OD値_cal    ΔOD
0.04     0.02     -0.02
0.26     0.25     -0.01
0.46     0.45     -0.01
0.66     0.66     0.00
0.85     0.85     0.00
1.04     1.04     0.00
1.25     1.24     -0.01
1.45     1.48     0.03
1.64     1.68     0.04
1.85     1.88     0.03
2.03     2.06     0.03
2.25     2.27     0.02
2.46     2.46     0.00
2.68     2.66     -0.02
2.88     2.82     -0.06

 

■結論

 

校正を予め行うと、校正に使用したステップタブレットにて、最大 0.06(OD値)の差となった。

 

ちなみに、本格的な濃度計の精度は、例えば、X-riteの361Tにて、Repeatability(繰り返し再現性)が、 ±0.01 D (0.0 D to 5.0 D) です。

 

よって、「イメージスキャナを使った濃度計測手段は、濃度計の替わりにはならないが、OD値にて、±0.1程度の精度であることを承知の上で使うのであれば、濃度計として扱うことは可能である。(%1)」と考えます。

(記事更新履歴)
2013.9.24 富士フィルムステップタブレットの商品ページを変更。http://fujifilm.jp/business/material/testchart/step/

 

 

 

 

 

 

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2009年1月17日 (土)

スキャナは濃度計になるか? その2

日立製作所 分光光度計 U-4000を使って エドモンドオプティスクの透過型グレースケールチャートの分光透過率を測定しました。
測定波長範囲は、380nm~1100nmです。

 

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/fig_gs_t100.jpg
測定結果の名称は、15段ステップの内、最初をbase、次をstep1としてあります。
15段目は、step14となります。
baseは、ご覧の通り、600nmよりも短波長側で徐々に透過率が落ちます。
近赤外域はかなり安定してフラットなベースフィルムです。
濃度ステップ側は、逆に赤外域ほど透過率が下がる傾向があるようです。
縦軸を透過率10%にしたグラフが下記です。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/fig_gs_t10.jpg

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スキャナは濃度計になるか? その1

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/u4000b.jpg
この写真は、長野県精密工業試験場(岡谷市)に設置してあります、日立製作所製のU-4000形分光光度計の写真です。
中はこんな感じ。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/u4000a.jpg

 

回折格子(プリズム)で分けた単色光ビームをハーフミラーで2手にに分けて、片方の光を参照光にしながら、非測定物の透過光を積分球に入れて、フォトマルチプライヤで検出します。
参照光との相対比較で測定するために非常に精度の高い分光測定装置です。

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