COVID-19の影響で急速に普及している非接触温度計
訪問先企業の受付で、記帳とセットで体温を測るアレ。
黒体輻射の原理で、温度計測して、
±0.5度とかの精度が出るんだろうか?
と疑問だった。
ちょっと調べてみました。
15年前のデバイスの論文です。(日産とNEC)
黒体輻射(つまり分光測定)ではなくて、赤外線画像を得て1画素毎の赤外線から生じる熱を微細加工した熱電対で電圧に変換する方式でした。
「サーモパイル型」という原理で、シリコン半導体技術の成果がふんだんに使われたデバイスであることが判りました。
しかけとしては、スマホのカメラ部分のシリコンセンサと同じように、
0.1mmピッチの2次元配列のセンサ(=サーモパイル)から構成され、
可視光ではなく赤外線(5~17μm)をレンズ(シリコン結晶レンズ)で結像する。
赤外線の「画像」が結像した1ケのサーモパイルは、90%熱に変換される。
熱電対と同じ原理で、熱起電力を計測する。
~~~ 詳細
サーモパイルによる非接触温度計の原理
1)ゼーベック効果 Seebeck effect
異なる材料からなる2本の線材の両端に温度差があると電圧が発生する。熱起電力。
つまり温度差から発電する。熱電対など電子式温度計はこの原理を使っている。
※電子部品式の冷蔵庫はこれの逆の原理。電力を使って片方を冷却、もう片方を加熱する。【ペルチェ効果】Peltier effect
普及しているサーモパイルは、
高熱側と冷熱側を2本の「細い」シリコンの棒で繋ぎ、
片方がP型(Bボロン入り)、もう片方をN型(Pリン入り)にして異種接合する。
Li-Be-<B>-C-N-O-F-Ne
Na-Mg-Al-【Si】-<P>-S-Cl-Ar
2)シリコンの棒の「細さ」が熱伝導における「抵抗」の意味があり、
抵抗が大きい(細い)ほど、大きな温度差が生じて電圧差が生じる。
近年、シリコン材においては、マイクロマシーニング技術(*)によって細線化を果たしている。
(*)マイクロマシーニング技術:
単結晶シリコンの薬品によるエッチングが結晶の方向によって異方性があることを利用し、フォトリソグラフィ(レジスト材を使って選択した領域を垂直方向に削る)によりμmサイズの機械的構造物を作る技術。
3)多重化
p-Si/n-Siの熱電対セットを直列に接続して熱起電力を大きくする。
4) 熱を吸収する部分
熱とは具体的には、赤外線。
2次元画像として捉えるために、1つの「画素」は、辺0.1mm四方。
熱を捉える効率は、90%以上。
構造:赤外線>>Au-Black(金黒膜)> AlSi-metal >(p/n)PlySilicon(Si)
5) 他の方式との比較
競合方式の
ボロメータ型は、
・感度はサーモパイル型より高い。
・動作温度をペルチェ素子で一定温度にする必要がある。
・チョッパーが必要。
・電圧出力が小さいので後段回路(アンプ)が必要。
一方、サーモパイル型は、
・シリコン半導体プロセスを利用できるのでセンサの製造が低コストになる。
画像 http://ch.ce.nihon-u.ac.jp/kako/PC_HTML/Lect/pt3/3_10_cmt.html
(日本大学のページより)

出典:
サーモパイル型非冷却赤外線検出器の開発
2005.6
http://www.jsir.org/wp/wp-content/uploads/2015/01/2005.6VOL.14NO.2_12.pdf
参考:
https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/ssd/07_handbook.pdf
熱型検出素子 浜松ホトニクス
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