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2019年4月17日 (水)

ブラックホールの写真を何故撮れたのか。

今年4月に入ってからのビッグニュースに「ブラックホールの画像撮影」という快挙がありました。 

http://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html

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国立天文台 

地球からM87中心ブラックホールへのズームイン映像 

Zooming in to the Heart of Messier 87 

https://www.youtube.com/watch?v=UWcKmjMcqdU 

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 ノーベル賞受賞にも匹敵すると話題にされ、そのドーナツ状のオレンジの画像をニュースでご覧になった方も多かったと想います。「地球上の8つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクト」「地球の直径サイズの望遠鏡を作った。」と解説番組でイラストを目にしました。 

 現在、TMTというプロジェクトが動いています。直径30メートル(Thirty Meter Telescope)の天体望遠鏡を作ろうというプロジェクトです。30メートルの望遠鏡をこれから作ろうという時に、地球の直径サイズの望遠鏡を作れたのは何故か。 

 そのポイントは、2つあるのではないでしょうか? 

 (1)観測に使用した光の波長は、 1.3mm の電波であったこと。 

 (2)世界同時観測の、その「同時」の精度に原子時計が使われたこと。 

この2点です。 

 髪の毛の太さが約0.07mmですので、髪の毛20本分の寸法の波長の光を観測に使ったことになります。すなわち、今回の快挙の影に隠れた技術のポイント一つは、「時計」だと想いました。 

 私は高校生の時、15mmほどの分厚いガラス円板を2枚入手し、それを研磨砂で磨いて反射望遠鏡の鏡を作り、反射式の天体望遠鏡を作ったことがあります。口径10cmと口径15cm2台の反射望遠鏡を作りました。反射鏡の製作は、まず「完全なる球面」を目指します。最後に鏡の中央を球面よりも僅かに深掘りして、放物面(パラボラ)にします。 

 ここで、目標とする表面精度ですが、可視光波長の1/4とか、1/8の精度で磨き上げます。λ/4とか、λ/8という表記をします。可視光を555nm(緑)とすれば、100nm01μm=0.0001mm程度の精度を狙って削る。反射望遠鏡の鏡の精度は、観測に使う波長の1418程度の精度が必要。これがまず覚えておくべき重要な数字です。 

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 波長1.3mmの光の14は、約0.3mmです。よって、波長1.3mmの光で観測する望遠鏡の製造精度は、0.3mmの寸法精度で、表面の形状を厳密に製造する必要があります。では、「世界同時に観測する」ためには、何がポイントか? それは、「世界同時観測する観測所で使用する時計の精度は、光が0.3mm進む時間よりも短いこと。」です。そこで、次に計算してみましょう。ぜひご一緒にトライしてみてください。 

Q:光が0.3mm進むために必要となる時間は何秒か。1/10xxxx。とゼロがいくつ並ぶかを計算してみてください。 

 

<計算> 

光は、1秒間に地球を7周半回る。地球の直径は、14万キロメートルでしたね。

 よって、30万キロメートル。次に、単位を揃えます。問いは、[0.3mm]ですので、30万キロメートルもミリメートルの単位に変えます。30km = 30 ×10,000 km = 30 x 10,000 x 1,000 [m] ゼロが多い時は、その数を数えて表記します。3×10^8 [m]、問いの単位は、mmですので、更に1000倍(ゼロ3つ増やす)します。 

3×10^11[mm]、さて、これで準備が整いました。 

Q:光が0.3mm進むために必要となる時間は何秒か。時間は、距離、割る、速度で得られますので、0.3/3×10^11 を求めます。0.3/3×10^11 = 3/3x10^12=1/10^12=10^(-12)。ゼロが12ケで、1兆です。よって、1兆分の1秒が答えです。 

 ちなみに、原子時計の精度は、現在、10^(-15)  ~ 10^(-11) の範囲にあるとのことです。「高精度のものは3000万年に1秒程度、小型化された精度の低いものでも3000年に1秒程度の誤差である。」(Wiki)だそうです。 

 いつか、今回のブラックホール可視化の仕掛け人、本間希樹教授のプログラムが公開される。世界中に0.3mmの精度で電波望遠鏡を作る人が溢れる。安価な原子時計モジュールが発売される。波長1.3mm電波の安価なセンサが発売される。さて、そんな個人が趣味でブラックホールを撮影する時代はやって来るのでしょうか。 

関連記事: 

2019219日、 原子時計が、小型低消費電力に。https://bit.ly/2NkLwt3 

2.2×10-12の長期周波数安定度を達成した。「この開発品は、5年後を目途に販売開始を目指す。」

 

(追記)

ALMA プレスリリース

https://alma-telescope.jp/news/press/eht-201904

イベント・ホライズン・テレスコープを構成する各望遠鏡は、物理的に直接つながっているわけではありませんが、非常に精密な原子時計によってデータが正確に同期されています。

今回の観測は20174月に行われ、波長1.3mmの電波が観測されました。

イベント・ホライズン・テレスコープの各望遠鏡は1350テラバイトという膨大なデータを生み出し、ヘリウムガスが充填された高性能なハードディスクに蓄積されました。

これらのデータは、マックスプランク電波天文学研究所とマサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所にある専用の高性能スーパーコンピュータ(相関器)に運ばれ、処理されました。

処理されたデータをもとに、研究者たちは苦心して自分たちで作ったソフトウェアを使って画像化を行いました。



1日350テラバイトかぁ。

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