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2017年10月28日 (土)

古地図をデジカメやスキャナで分割撮影する方法

デジタルアーカイブ系の論文を読み解く シリーズ1

大判資料(古地図等)の分割撮影向け簡易撮影台の作製
Portable camera frames to take multiple shots for large documents like maps
大矢一志

鶴見大学紀要 第47号 第4部
平成22(2010)年3月 別冊

URL:
http://library.tsurumi-u.ac.jp/metadb/up/admin/pt4_07_ohya.pdf

■主な写真

Fig4_

Fig5_


■概要
大きな古地図全域(たとえば畳1畳分、90cm×180cm)を一定の光学解像度(例えば300ppi、400ppi)で撮影する手段の開発報告書。

具体的には、
(1)デジタルカメラによる分割撮影、
(2)イメージスキャナ(CIS方式)による分割撮影、
(3)イメージスキャナ(CCD方式)による分割撮影、
の試作を行い、開発コスト、実作業での操作性、全体俯瞰図完成までの作業時間、完成図の精度や画像品質など、 現場の学芸員が使う立場に立った、総合的な評価を含む、実践的な実験報告書。

目的、目標、手順履歴、結果、評価、など子細に記述されていて、このテーマ「大判資料(古地図等)の分割撮影」を行おうとする者にとって、具体的な手引き書になっている。優れた論文だと思う。

この論文が書かれた背景を著者は論文最後に簡単に記載している。


本稿は、撮影台を作成した報告を目的とした、学術 研究論文というよりは、いわば技術報告書に近いものである。その意味では(、技官ではない)自分が用意する論文としては相応しくないかもしれない。日本では、資料の電子化そのものに関する学術的な研究は極めて少なく、また、その発表も高く評価されることはまれである。現場に直接還元できる実験報告は、意図的に学術論文としての性格を放棄しない限り、現状では共有できる情勢ではない。よって、本稿は、学術論文としての立場を放棄する。大矢・土屋 2000[1]でも述べた通り、研究者が自らの手で資料を電子化することは、 人文情報学の研究を進める上で極めて重要な仕事であると考えている。その環境を整えるためには、このような報告書も価値があると考えている。よって、本稿を上梓した。
■実験に用いた機材:
・デジタルカメラ Canon EOS 5D, EF50mm F2.5 Compact macro
・イメージスキャナ(CCD方式) Epson Colorio GT-S620
・イメージスキャナ (CIS方式)Canon CanoScan LiDE 600F

■コメント
イメージスキャナ設計者の視点で、2箇所気になる記述があったので、コメントする。
◇ page49 欄外コメント16)
「スキャナの場合、多くがレンズによる収差を自動的に補正してくれる。」
正確には、製造前の段階で収差が無いレンズ設計を実施している。具体的には、一般的にレンズには球面収差や歪曲収差、非点収差、そしてこれらの波長依存性で生じる色収差、などがあり、レンズ光軸中心(CCD式スキャナではスキャンエリア(短辺×長辺)の短辺側の中央位置)と周辺で異なる特性を有しているために生じる。
そこで、レンズ設計段階にて、ラインセンサ(イメージスキャナのセンサは、デジカメのセンサと異なり、2次元画素配列ではなく、1次元配列である)の逆投影面である被写体上の1本の線上において、収差の無い、均一な画像を得られるように、レンズ設計が行われる。非常に小さいレンズである(直径30~40mm)が、高級一眼レフ用のマクロレンズ同様に、5群7枚などといった高性能レンズが採用される。
加えると、イメージスキャナが、「自動的に補正」しているのは、主に「シェーディング補正」と呼ばれる機能である。イメージスキャナは、内部に白基準板と呼ぶ、反射率基準板を内蔵している。イメージスキャナは、電源投入後の起動時や、スキャニングする毎に、事前に内蔵白基準板の画像取り込みを行い、校正(キャリブレーション)を実施する。この原理は、反射率測定機や、分光光度計の計測手段と全く同じである。白と黒を得て、センサの感度特性がリニア(光量vs出力が直線的)であることを利用して、校正を行っている。
そのため、「(1)光源の光量ムラ、(2)レンズの周辺減光、(3)ラインセンサ画素毎の感度のバラツキ、(4)光源の光量、(5)レンズのF(絞り)値の明暗バラツキ、折り返しミラーの反射率バラツキ、(6)ラインセンサ全体の感度バラツキ、」など、時間変動の無い要因(=パターンムラ)を全て自動的に補正することができる。 その結果、分割撮影において、隣接画像との階調差が発生しない(継ぎ接ぎ部分で明暗差が生じない)階調再現性(色再現性)が担保される。

◇ page52 付録
「CCD方式では、被写界深度はCIS方式のそれより は深いため、ピントの合う領域は広くなり、図上では ほぼ全面でピントが合っている(図8)。 しかし、 デジタルカメラの方は、絞りの量を多く調整すると被写界深 度はより深くなるため、折り目に沈んでいる文字も浮 かび上がらせて撮影することができる 」

Fig789

この画像(図8)を見る限りでは、被写界深度の要因ではなく、採用したCCD方式イメージスキャナの照明装置の問題であると推定される。評価したイメージスキャナは、片側照明装置搭載のモデル(GT-S620)であり、光源の指向性が高く(拡散性が低く)、凹凸に対して影(陰影)が強い。そのため、凹部の奥まった箇所に光が届いて居ないためと思われる。
 
以上です。
このような素晴らしい大矢氏の論文や、私のささやかなコメントが、大型古地図撮影現場の学芸員や技官の方のお役に立つことを祈念して。

(初出:アイメジャー公式フェイスブック)

(補足1)

http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-15c8.html
高精細画像の写真撮影とレプリカの制作
このブログ記事では、
アドビ Adobe 社のフォトショップ Photoshop を使った機能

1.フォトマージ (パノラマ写真合成の機能)
2.レイヤー合成 (全焦点画像、パンフォーカス画像を作るための機能)
3.ワープ (複数画像を繋ぎ合わせるために画像を手作業で局所的に歪ませて接合し境目を目立たなくさせる、モーフィング機能)
について概略を解説しています。

(補足2)
イメージスキャナには、CIS方式とCCD方式があります。
解説記事です。
イメージスキャナの解像度 その2
2007年12月16日

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