フィルムスキャナ用のセンサ1画素あたりの飽和電荷量の目標値はいくつか?
フィルムスキャナ用のセンサ1画素あたりの飽和電荷量の目標値はいくつか?
[結論:1画素あたり 275兆個の電子=光子を貯めることのできるセンサ ]
昔書いたブログ記事ですが、結構読まれています。
光ショットノイズ
http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_bd38.html
この記事のコメント欄で9年前に議論してきた話題は
パナソニックによって現実化してきましたね。
楽しみです。
一年前のPanasonicのプレスリリース http://news.panasonic.com/jp/press/data/2016/02/jn160203-3/jn160203-3.html
ここで述べられている
123dB ですが、もう少し設計の視点でブレークダウンします。
まずdBの定義:
dB=20*log(V/V0)
これに123dBを代入すると、
V/V0=10^6.15
つまり、1画素あたりに141万個のフォトンを貯める、って計算。
光ショットノイズは、信号(S)の平方根で決まるとして、
S/Nで 10^(6.15/2) = 10^3.075
=1188.5
OD値にして、3.075
つまり、ポジフィルのスキャンに手が届き始めます。
・・・
ここで、ポジフィルムの最大濃度を整理します。
カラーリバーサルフィルム特性曲線
写真工学の基礎−銀塩写真編-
Principles of Photographic Science and Engineering
1979年初版
1998年改訂版
編者 日本写真学会
第8章核種感光材料 page702
3本の線の凡例(はんれい)が無いけど、ネットを見るとどうやら、
上から順番に、R,G,B
http://www.muhyo.jp/contents/ev/images/velvia100f_476_421.png
log(露光量)= -2.0 あたりの濃度で比較すると、
濃い順に、
Green 3.8
Blue 3.7
Red 3.3
ってところですかね。
よって、必要十分なフィルム用スキャナのS/N目標値は、
S/Nで、3.8
Sは、自乗必要。(光ショットノイズは信号の平方根で決まるとして)
S=10^(2*3.8)
光電変換効率が1.0と仮定して、
同じくセンサの1画素あたりの飽和電荷数は、
10^(2*3.8) = 0.275*10^15
単位を整理すると、
10^3:K キロ
10^6:M メガ
10^9:G ギガ
10^12:T テラ(=兆)
10^15:P ペタ
ですので、
275兆個の電子=光子を貯めることのできるセンサ。
がゴール、ということになりますでしょうか。
特に、OD値の最大濃度が、Greenってことが課題です。
Green成分は、肉眼の濃淡感度にもっとも敏感な波長です。
つまり、空間周波数に最も影響する。
(まあ、だからベイヤー配列のセンサのフィルタ配置は、
4つの領域に、Greenフィルタを2枚も消費するわけです。)
だから、OD値3.8は必須達成目標ですね。
Panasonicさん がんばれ。
デジタルのフィルムスキャナで、ドラムスキャナを超える時代がもうすぐそこに来ています。
古いネガ写真であるガラス乾板のデジタルアーカイブの本命は、恐らくこのPanasonicの有機薄膜+CMOSのセンサが商業化することで達成できるんじゃないかと期待 しています。
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