イメージスキャナを色彩色度計に使う
Apple のカラーマネージメントシステム Color SyncをAdobe のPhotoshopがまじめにサポートを開始し始めた頃、ICC プロファイルのプラグインが登場し、表題の記事をネットに書いたことがありました。(FPHOTOD 1998.12.10)
この記事をネットで見た方から、「Kodak GrayScaleの#MのL*が50にならない!」と質問がきましたので、久しぶりにPhotoshopで試してみました。
CS2ですが、最新Versionでも同じだと思われますのでお試しください。
以下、ステップ。
1.Photoshop設定
Photoshop CS2
PS>編集>カラー設定
作業スペース
RGB : Adobe RGB(1998) (%1)
(略)
カラーマネージメントポリシー
プロファイルの不一致:□開く時に確認□ペーストする時に確認
埋め込みプロファイルなし:□開く時に確認
以上3箇所すべてにチェックを入れる。
2.スキャン
EPSON Scanのドライバ設定
環境設定>カラー
◎ドライバによる色補正なし
をチェックする。(%2)
3.画像ファイルを開く
スキャンした画像をPhotoshopで開く。
case-1:
「埋め込まれたプロファイルの不一致」ダイアログが表示されたら、
◎埋め込まれたプロファイルを破棄(カラーマネージメントをしない)
にチェックして、[OK]ボタンを押す。
case-2:
「プロファイルなし」ダイアログが表示された場合。
◎そのままにする(カラーマネージメントなし)
にチェックして、[OK]ボタンを押す。
※2.にてEPSON Scanによる画像取込を単独アプリケーションソフトとして動作させ、直接ファイル保存した場合に、case-1、もしくは、case-2になります。
Photoshopのプラグインを使って、TWAIN経由で画像を直接取り込む場合は、いずれのダイアログも表示されません。次に進んでください。
4.プロファイルを指定して変換する。
PS>編集>プロファイルの指定
○プロファイル: EPSON ES-2200
↑チェックして、使用したスキャナを選択する。
5.Labモードに変換する
PS>イメージ>モード>Lab カラー
6.Lab値を読む
PS>ウィンドウ>情報
結果は下記のとおり。
KodakのGrayScaleチャートの#Mは反射率が18%であり、L*値は、計算では、49.5である。
a,bがゼロとなっていないのは、ご愛嬌。
【補足】
上記Tipsのミソは、EPSONが提供するスキャナのICCプロファイルはどのようなスキャナドライバの設定で得た画像から作成されたのか?という質問に対する答えを持っているかどうかにあり、正解は、
○ドライバによる色補正なし
にチェック、です。
もしかしたら、EPSONはこの情報をきちんとアナウンスしていないのかも知れません。(%3)
%1)作業スペース
作業スペースは、CS2では、Adobe RGB(1998)を選ぶしかないのですが、16bitで処理できるようになったので、ホントは、CIEのXYZでやればいいのですが。
最新版のCSをお持ちの方、確認してみてください。
%2)EPSON Scanの設定画面
http://faq.epson.jp/faq/00/app/servlet/relatedqa?QID=001152#2-2
%3)EPSONのアナウンス
調べて見た限りでは、プリンタのドライバの解説では、「色補正なし」を何に使うのかは明記されています。
-----
http://faq.epson.jp/faq/00/app/servlet/qadoc?001857
ドライバーによる色補正を行いません。
アプリケーションソフト側でカラーマネージメントを行う場合に選択します。
[色補正なし]を選択します。
-----
しかし、スキャナの文章では、説明がありませんでした。
http://faq.epson.jp/faq/00/app/servlet/relatedqa?QID=001152
まだ、EPSON faqでの探し方が良く解っていないだけかも。。
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質問主の熊谷です。
上記手順にて計測したところ、
KodakのGrayScaleチャートの#MのL*値は51と出ました。
ここで疑問なのですが、4.のプロファイルを指定して変換する。という手順は、
スキャン時の設定でソースプロファイルをEPSON標準、ターゲットをAdobeRGBなどに設定している場合と、どのような違いがありますが? この場合最終的にL*値を測定しているので、ターゲットをAdobeRGBにしていてもL*値は変化しないのでは?と思いました。
投稿: 熊谷 | 2010年9月22日 (水) 14時26分
熊谷様
コメントありがとうございます。
原理的には違いはありません。
スキャナの生データを変換せずに保存し、アプリ側で加工する。という考え方から、上記手順を書きました。
スキャナ本体の能力では、例えば、OD値3.0とかのデータを得ているのですが、色変換をかけてしまうと、RedやBlue成分の暗部はかなり変換による影響を受けています。
スキャナの生データ(raw)をそのままに、用途に応じてアプリ側で意識的に色変換をかける。
という考えです。
投稿: いちのせ | 2010年9月22日 (水) 19時41分
いちのせさま
引き続きコダックチャートをスキャンしていて面白いことを発見しました。
EPSON Scanのアプリで画像をスキャン(一度デスクトップなどに保存)取り込んだ結果は、補正無し、各プロファイルによらず全て、L*=51となりました。
ところが、PhosothopよりTWAINを使用して取り込みを行うと、
無補正:40
ソースEPSON純正-ターゲットAdobeRGB:51
ソースEPSON純正-ターゲットAppleRGB:43
ソースEPSON純正-ターゲットColorMatchRGB:43
となり、各設定によってL*の値が異なりました。これはおかしい! と思い調べてみると、TWAIN取り込みだと取り込まれた画像は取り込み設定によらず全てAdobeRGBプロファイルが当てられており(Phosothopのカラー設定の作業スペースかと思われます)、どこかで誤った変換や展開が行われているのでは? と思っています。
EPSON Scanの結果のように、設定によらず、取り込んで保存された画像の状態でL*値がそろっているのが当然のはずだとは思うのですが、いったい何が原因でしょうか?
投稿: 熊谷 | 2010年9月23日 (木) 11時25分
熊谷さん ども。
最初に確認ですが、
>TWAIN取り込みだと取り込まれた画像は取り込み設定によらず全てAdobeRGBプロファイルが当てられており
Q:TWAIN取込後、熊谷さんが手動にて、ファイル保存をしていますよね?
答えがYesと仮定して。
PhotoshopはTWAIN取込動作のみであれば、Targetのプロファイルをつけて(Tag)無いと思います。
独立アプリケーションとして動作させるEPSON Scanで、ColorSyncやICMでスキャンすると、保存されるファイルにTargetで選択したICC Profileが付きます(Tag)。
PhotoshopのTWAIN Plugin経由で取込を行うと、Photoshop上のメモリに画像領域を確保して、そこに直接RGBデータを書込んでいるだけなんだと思いますよ。
理屈上は、Photoshopが画像データを受け取る際に、
・一旦画像ファイルに落とし、
・ICC プロファイルをTagし、
・アプリがそのファイルを開く、
という手順を実行すれば、EPSON Scanと同じ結果となり、TWAIN 取込後に「埋め込まれたプロファイルの不一致」ダイアログが表示され、変換しますか?というアラート表示されるようなしかけになると思います。
でも現時点で、TWAINにそのようなファイル経由の画像取込を行う機能が有るのかどうか確認しておりません。
最後に、、誤植を修正させて頂きました。TWAINが正しい表記です。
覚え難い略称ですよね。^^)
Technology Without An Interesting Name
投稿: いちのせ | 2010年9月28日 (火) 00時56分
熊谷さん
TWAIN2.1仕様
http://www.twain.org/
を斜め読みしました。
ICAP_ICCPROFILE
というケパビリティー(コマンド)があるようです。
そもそも、TWAINの仕様では、3つの画像データを渡す方法を定義しています。
○データをTWAINがアプリケーションに渡す方法
その1:Native
その2:Disk File
その3:Buffered Memory
Native転送と、Buffered Memory転送の2つは、TWAIN対応の(スキャナ)ドライバ(Data Sourceと呼びます)はサポートしなければならない。と書いてあります。
Disk File 転送は任意対応。
スキャンした画像ファイルに、ICC Profileをくっつける(embed or link ※昔はTagと呼んでいましたが、この仕様書では、Tagという表現はしていないですね。)
には、ICAP_IMAGEFILEFORMATをサポートする必要があり、そのためには、File転送モードを使う必要がある。
ということのようです。(もしどなたか間違っていたら指摘ください。私は仕様書をそう読みました。)
まとめますと、TWAIN対応のドライバ側で、Disk File転送をサポートする必要がある。
その上で、
アプリ側のPhotoshopがその転送モードに対応した対処をするかどうか。
具体的には、ファイルを開く時に、「埋め込まれたプロファイルの不一致」ダイアログが表示し、変換しますか?というアラート表示するかどうか。
ということになります。
以上の対応をEPSON のTWAIN ドライバ側とPhotoshopが対応して初めて、熊谷さんが疑問に思った現象が解消されると推定されます。
投稿: いちのせ | 2010年9月29日 (水) 02時06分
いちのせさま
いろいろと調べていただきまして、感謝しております。
TWAIN経由のPhotoshop読み込みだと、「埋め込まれたプロファイルの不一致」ダイアログが表示し、変換しますか?というアラートは出ませんでした。この為カラー設定で設定しているデフォルトのRGBプロファイルに強制的に展開されてしまうようで、デフォルトのRGBプロファイルとは異なるプロファイルをターゲットに指定している場合や、色補正無しの場合は、読み込み後すぐにL*等を計測するとおかしな値が出てくる恐れがありますね。
ということは通常のフィルムネガのスキャニング時にも同様のことが起こっているので要注意ですね。
これで混乱の元が全て解決しました。
どうもありがとうございました。
投稿: 熊谷 | 2010年9月29日 (水) 10時18分
熊谷さんから教えて頂いた「プラチナプリントplatinotype」においては、フィルムネガの濃度を計測するプロセスが有ります。
イメージスキャナを濃度測定器(モノクロネガの濃度計)として使うのですから、再現性がまず重要ですよね。
ColorSyncやICMをつかってPhotoshopのTWAIN Pluginから直接読み込む方法では、Target ICC Profileによって結果が異なりますので、この用途には使えない。ということになりました。
scanner のtwain data source やPhotoshopが、twainのファイル転送モードに対応すれば解決する可能性があります。
投稿: いちのせ | 2010年9月30日 (木) 07時39分