非破壊で食品などの成分分析をリアルタイムで可視化するシステム
住友電気工業株式会社がおもしろいシステムを開発したようです。
近赤外光を用いた組成イメージングシステム「Compovision」の本格販売を開始
http://www.sei.co.jp/news/press/10/prs838_s.html
近赤外線領域には、さまざまな成分の吸収波長があります。
手のひら静脈の生体認証システムは700~900nmを使っています。
脳に近赤外線を当てて、リアルタイムに、脳内の血流分布を可視化する技術もあります。
歴史的には、米国で、穀物の品質管理のために、でんぶん、脂質、水分、タンパク質の品質検査を非破壊でリアルタイムに行う目的で開発されたのが、近赤外線による解析手法です。
今までこの目的に使う装置は、「点」を測定して、波長方向にスペクトルを取る、FTIRなどの方法か、
使用波長を1つに特定して、その特定波長で画像化する方法のいずれかでした。
・スペクトロメーターのように波長分解能がある。
・デジタルカメラのように光学分解能がある。
この2つの機能を同時に成り立たせるシステムとしては、かつて川鉄テクノリサーチが輸入してシステム化した装置として、回折格子とエリアセンサを組み合わせた、スペクトロメータ機能の有る、ラインセンサが存在していました。
ただし、ラインセンサのため、イメージスキャナと同じように、機械的に走査する必要があり、課題が残りました。
可視光領域、近赤外線領域、もう少し遠い近赤外線領域の3本の分光センサチューブが開発されていました。アプリケーションとして可視チューブを使って、印刷品質の評価に展開して600万円の分光スキャナを展示していました。
でも、その後の商品動向を聞きません。
今回の住友電工のシステムは、(Webでの発表内容からの推測で、詳細はまだ分かりませんが)顕微鏡タイプは、光源側は任意の波長の光を提供し、カメラ側で複数枚撮影する、システムであると推定されます。
もしくは、光源側で高速に供給波長スペクトルをスキャンし、全てのスペクトル毎に、カメラ画像を撮像するのかも知れません。
インラインタイプの構造が、ハロゲンランプが剥き出しなので、
複数波長の画像を処理しているようには思えませんが、どうなのでしょうか。
いずれにしても、日本国内で販売されている 海外メーカーのNIRカメラが何社かありますが、これらが使用しているセンサは、実は日本の住友電工が供給しています。
そのセンサ開発元が本格的にセンサ開発から手がけたシステムですので、かなり期待が持てるのではないかと思います。
それとこのセンサ、冷却システムのことに言及していません。もしかしたら、室温で動作するのかも知れません。1000〜1700nm対応のInGaAsセンサでも
ペルチェ素子で-30度程度に冷却しないと使い物になりません。冷却不要となれば、画期的です。
(2010.8.6追記)
営業に電話で確認しました。
・カメラ単体での販売はしない。
・システムインテグレータを通しての販売は現在考えていない。
・食品工場の生産ラインのエンドユーザーを直接顧客としてシステム導入を考えている。検量線作成などを含め、住友電工が直接お客さんと協同で個別開発する。
・価格は2千万〜2.5千万円。
とのことでした。
つまり、システムインテグレータが拘わる余地を残さない方針のようです。
住友電工さんがそれだけの営業、技術スタッフを本プロジェクトに投入するということなのでしょうね。期待しております。
関連記事:
robonable:
http://robonable.typepad.jp/news/2010/08/03sumitomo.html
(2010.9.13追記)
ライン分光方式のため、2次元画像を得るには時間がかかりますが、14μmまで撮像できるシステムも提案されています。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-d212.html
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