ES-10000Gの直角精度
ES-10000Gの直角精度を計測しました。
方法は下記の通りです。
1.テストチャートを作成。
2.テストチャートを3次元測定機で予め測定。
3.テストチャートをスキャナにセットしてスキャン。
4.Image Jを使って、テストチャートのスキャン画像の角度を測定。
まず、テストチャートですが、温度や湿度で伸縮しないようにするために、ガラス基板の上にクロム(Cr)蒸着して作成しました。いわゆる「フォトエッチング」です。光学的に位置計測をできるように4mm角の中をΦ2mmの円抜きのCr(クロム)マークを作ります。250mm四角形のコーナーにこのマークを配置します。
3次元測定機は、ミツトヨの測定器でレンズ+カメラを使って非接触で測定します。繰り返し再現精度は、1〜2μmです。
■チャートの直角精度
四角形の直角の誤差は、最大で 0.0003 度でした。
今回の実験目的の観点からは、必要充分なチャート精度です。
ちなみに、この精度は、どの程度かといいますと、、
例えば、250mmを1200ppiでスキャンした場合、
1pixel分の角度は、rad(ラジアン)にて、
= (25.4/1200)/250 = 0.085 mrad(ミリラジアン, %4)
角度に換算して、degree = (180/π) * rad = 0.0048 度。
よって、250mm の長さで、1200ppiの1pixel分の回転が 0.0048度となります。
(フォトショップの回転角度の設定分解能は、0.01度です。画像は中央で回転しますので、A4の原稿を1200dpiでスキャンして1pixel回転分の精度を想定しているということになります。1200dpiでスキャンした会社ロゴなどのラインアート編集を考えるとリーズナブルな精度なのでしょうね。)
■ImageJによる角度測定
ImageJのツールで、3カ所指定により2直線の交わる角度を計測する機能があります。ただし、表示精度が、0.01度までなので、次の方法で行いました。
Φ2mmの白抜き穴のマークに、ImageJの領域指定用の円を置き、その中心座標位置を画素数単位で読む(%3)。→ (x,y pixel)四角形の4角全ての中心座標を読みます。最後に、ベクトルの内積で内角を計算します。
■結果:
手元にあった、EPSON ES-10000G 3台の直交性を計測した結果、
一番ずれていた固体で、 90.19 度。
もっとも直角の出ていた固体で、 90.08 度。
でした。(%2)
補足:
ところで、何故この実験をやったかというと、新製品 OMATA SCANNER Q31 にて、直角精度を上げるためです。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/20108681pp52-54.html
A3よりも大きい製版フィルムを分割スキャンするために、スキャナの直角精度が問題となります。
目標(Must)は、ES-10000Gの有効スキャン寸法420mmにて、175線の網点ピッチを達成しなければなりませんので、下記の通りです。
目標角度精度(Must):
rad = (25.4/175)/420 = 0.346 mrad(ミリラジアン)
degree = (180/π) * rad = 0.02 度
%2)実験結果詳細:
3台のES-10000Gの直交精度計測結果は下記の通り。
■1台目:s/n:FVR0002552
10回平均:90.076度 (差:+0.076度)
標準偏差:0.0026
■2台目:s/n:FVR0000909
10回平均:90.132度 (差:+0.132度)
標準偏差:0.0030
■3台目:s/n:FVR0004921
10回平均:90.185度 (差:+0.185度)
標準偏差:0.0035
%3) ImageJにて真円の中心座標位置を画素数単位で読む
%4)mrad
wikipediaでミリラジアンを検索したら、記述に間違いを見つけたので修正しておいた。初めてwikiを編集しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AB_%28%E8%A7%92%E5%BA%A6%29
rad =180/π
なので、
mrad = (180/π)/1000
= (360/2π)/1000
= 360/2000π
ですが、
wikiには、
mrad = 1/2000π
と記載されていました。
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