スキャナは濃度計になるか? その3
このテーマの続きです。
■実験方法
透過型ステップタブレット(15段、最大OD値 2.85 )
イメージスキャナ:EPSON ES-10000G
オプション:透過原稿ユニット ESA3FLU3
Densitometor : ON
16bitGray
DropOut:Green
解像度:300ppi
エドモンドのステップタブレットの長期的供給が不可となったため、富士フィルムイメージテックのタブレットを購入しました。ただし、透過モード用は、最大濃度が2.85です(15段にて)
http://fujifilm.jp/business/material/testchart/step/
http://fujifilm.jp/business/material/inspection/testchart/step/index.html
測定値付き:@6,000- (添付データはX-rite 310の計測データでした。)
測定値無し:@5,000-
換算OD値 = - LOG ( 16bit平均値 / 65535)
■実験結果
ステップタブレット読み取り(OD値)
No.1(1回)
OD値 16bit平均 StdDev 換算OD値
1 0.04 57271 457.16 0.059
2 0.26 32835 372.63 0.300
3 0.46 20251 292.40 0.510
4 0.66 12093 288.32 0.734
5 0.85 7539.7 153.02 0.939
6 1.04 4684.0 108.12 1.146
7 1.25 2914.9 78.559 1.352
8 1.45 1607.9 57.735 1.610
9 1.64 992.74 44.461 1.820
10 1.85 607.29 36.558 2.033
11 2.03 388.93 30.749 2.227
12 2.25 233.02 26.972 2.449
13 2.46 144.11 24.894 2.658
14 2.68 91.115 23.593 2.857
15 2.88 61.093 21.371 3.030
■グラフ
X軸:ステップタブレットをX-rite 310で計測したデータ
Y軸:イメージスキャナで得た値から換算したOD値
■解析
近似式:Y= 1.0625X + 0.0374, R^2= 0.9991
■校正
近似式を使ってスキャナの値を校正する。
X = ( Y - 0.0374) / 1.0625
OD値_cal = ( 換算OD値 - 0.0374)/1.0625
OD値 OD値_cal ΔOD
0.04 0.02 -0.02
0.26 0.25 -0.01
0.46 0.45 -0.01
0.66 0.66 0.00
0.85 0.85 0.00
1.04 1.04 0.00
1.25 1.24 -0.01
1.45 1.48 0.03
1.64 1.68 0.04
1.85 1.88 0.03
2.03 2.06 0.03
2.25 2.27 0.02
2.46 2.46 0.00
2.68 2.66 -0.02
2.88 2.82 -0.06
■結論
校正を予め行うと、校正に使用したステップタブレットにて、最大 0.06(OD値)の差となった。
ちなみに、本格的な濃度計の精度は、例えば、X-riteの361Tにて、Repeatability(繰り返し再現性)が、 ±0.01 D (0.0 D to 5.0 D) です。
よって、「イメージスキャナを使った濃度計測手段は、濃度計の替わりにはならないが、OD値にて、±0.1程度の精度であることを承知の上で使うのであれば、濃度計として扱うことは可能である。(%1)」と考えます。
(記事更新履歴)
2013.9.24 富士フィルムステップタブレットの商品ページを変更。http://fujifilm.jp/business/material/testchart/step/
■追加データ
No.2(1回)
OD値 OD値_cal ΔOD
0.04 0.01 -0.03
0.26 0.24 -0.02
0.46 0.44 -0.02
0.66 0.65 -0.01
0.85 0.85 0
1.05 1.05 0
1.25 1.24 -0.01
1.45 1.49 0.04
1.64 1.68 0.04
1.85 1.89 0.04
2.03 2.07 0.04
2.26 2.29 0.03
2.46 2.48 0.02
2.68 2.68 0
2.87 2.83 -0.04
関連記事:
(%1)濃度計として扱うことは可能である。
知人から指摘を受け補足します。
イメージスキャナの分光感度は、濃度計のそれとは異なるため、色について評価する場合は、対象の分光特性に依存する可能性がある。
また、照明の照射角度/センサへの受光角度、いわゆるジオメトリは、濃度計においては、0/0か、0/45度などと定義されているが、イメージスキャナの場合は、ジオメトリが異なる。よって試料が拡散(散光)する特性があるかどうかに依存する可能性がある。
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