ES-10000G寸法精度の温度依存性
今週末のブックフェアにてお客様と協同開発したスキャナを発表致します。
その製品の評価を目的として、基礎データを取っております。
今回公表します実験結果は、
ES-10000Gの寸法精度、及び、温度依存性です。
例えば、100mmの物差しをスキャンした時に、
どの程度寸法誤差があるのか。
また、それは、冬と夏で異なるのか?
といった疑問への回答になります。
以下測定結果です。
スキャナ:ES-10000G , s/n=FVR0000909
温度 寸法倍率(主走査)
10℃ 99.908%
20℃ 99.976%
30℃ 100.09%
(目盛231mm。計測精度:0.0092%。テストチャートを5回スキャンして平均。
テストチャート:t2.8ガラス表面にクロム蒸着したパターンを
ミツトヨの3D測定器で計測。計測精度1μm)
※温度が高くなる程、見かけの倍率が高くなります。
凡そ、20℃の温度変化(10~30℃)にて、
主走査寸法倍率は、0.1% 増加する結果となりました。
つまり、1000pixelであれば、温度変化ΔT=20℃で、1pixel分ずれる。
この結果から、例えば、310mm幅の主走査幅を
2400dpiでスキャンした時に、
1画素単位で伸縮を問題とした場合は、
12.2インチx2400 = 29280 pixel
ですので、1pixelの伸縮は、0.0034%なので、
2400dpiの伸縮を問題にする場合、温度管理を0.7℃に抑える必要があることになります。
175dpiの伸縮を問題にする場合では、同じく温度管理を9.3℃に抑える必要があることになります。
副走査(キャリッジがベルトで駆動する方向)は、温度依存性は、1ケタ低くなります。
温度 寸法倍率(副走査)
10℃ 100.090%
20℃ 100.103%
30℃ 100.102%
(目盛250mm。計測精度:0.0085%。テストチャートを5回スキャンして平均。
テストチャート:t2.8ガラス表面にクロム蒸着したパターンを
ミツトヨの3D測定器で計測。目盛250mm。計測精度1μm)
凡そ、20℃の温度変化(10~30℃)にて、
副走査寸法倍率は、0.01% 増加する結果となりました。
つまり、10,000pixelであれば、温度変化ΔT=20℃で、1pixel分ずれる。
他、キャリッジの直交性も調査したので、別途報告します。
角度 90度の直角のチャートが、スキャンした画像にて、角度何度でスキャンされるのか。
■追記:
「20℃の温度変化(10~30℃)にて、
主走査寸法倍率は、0.1% 増加する結果となりました。」
これの原因推定です。
レンズ〜センサ間の距離変動が疑われます。
ES-10000Gは、アルミダイキャストに、レンズ、CCDを固定しています。
アルミニウムの線膨張率は、20度付近にて、
30.2x10^(-6)/K (丸善理科年表より)
つまり、ΔT=20度変化では、
+0.06% 伸びることになります。
レンズ〜センサ間を100mmと仮定した場合、
+0.06%の伸びは、60μmの伸縮ズレに相当します。
F5.6程度のレンズでも、センサ側の被写界深度は、±60μm程度しかありませんので、ピントがズレることになります。
他にも要因があると思いますが、これが主要因と思われます。
冷えると、レンズ〜センサ間の距離が縮み、倍率が下がります。
また、ピント位置は、1/f = 1/a + 1/b というレンズの公式通りですので、
プラテンガラスよりも上に浮くはずです。
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