「原型はiモード」か?
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日本経済新聞 2010年3月17日11面
「iPhone向けソフト開発キットを無償で提供したことで、自らのソフトを世界中のiPhoneユーザーに使ってもらおうと開発者が殺到。」
「アップルのビジネスモデルの原型は、NTTドコモが1999年に世界で初めて商品化した携帯ネット接続サービス「iモード」だ。」
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i-modeには、痛い思いがある。
2000年5月、続けて起きた少年による殺人事件を知人と公開の場で正面から議論しようと電子掲示板を自ら開設して運用した時期があった。
秋ごろだったろうか、「無料の」電子掲示板 (%1) が充実し始めたので、そちらにも議論の場を拡大した。文面を読む限り確かに「無料」と書いてあった。
PCからも携帯電話からも閲覧することができた。
無料ならと、知人にも紹介した。
しかし、翌月の携帯電話の請求書を見てびっくりした。
普段の月よりも、3万円〜5万円も増加していた。
どうやら、その「無料電子掲示板」へ i-modeからアクセスすると課金される、ということが後で判った。
気づいた時には、既に、1.5ヶ月以上過ぎていた。
後の祭り。。
自分でPCから発言した記事に対し、知人が書込していないかと閲覧する度に、課金されていたということになる。
i-modeは、立ち上がった年に華々しい利益をNTTドコモにもたらした。
企業の間では、大成功したビジネスモデルとしてチヤホヤされていた。
だが、当時、私を始め「欺された」気分でi-modeを見る人は居たことと思う。
漸く、NPOなどの働きかけで制限が始まった携帯電話の「フィルタリング」に対するNTTドコモの動きを見ても、ユーザーの利益&不利益を尊重していない
ことが判る。
米国などでは、早くからPCのフィルタリング技術は確立していた。
技術情報としては、そうした手法があることは判っていたはずだ。
しかし、出会い系サイトをきっかけに犯罪に巻き込まれる青少年の事件が度重なり社会問題となっても、NTTドコモの動きは鈍かった。
「未成年の携帯電話の契約時に、何もしなくてもまず、フィルタリングがかかる。」
「解除しようとした時には、保護者の同意書にサインと押印が必要。」
というステップが確立されたのは、漸く2008年のことだったと思う。
それまでは、野放し状態だった。
これは、「i-modeで儲けるビジネスモデルをユーザーの利益よりも優先していた。」
と責められてもおかしくない、動きではないか、とんでもないことだと私は思う。
Appleは、ISVのサポートに常に尽力していた。私がISVのセミナーに顔を出したのは、確か、1994年か5年だったように思う。
ISVとは、Indipendent Software Vendor: 独立系ソフトウェア開発会社のことだ。日本でも、Macworld
Japanという今で言えば、幕張メッセで開かれるようなPC展示会を「晴海(はるみ)」で開き、ISVや周辺機器メーカーに「販売営業する場」を提供し
ていた。それだけでなく、ISVセミナーなど開発者のサポート体制が、綿密に組まれていた。MicrosoftのWindows
OSに押されていたAppleとしては、Macintosh OS用のアプリケーションを開発してくれるSoftware
Vendorを宝物のように大切にすることは、そのまま自社の利益に直結するから、当たり前と言えば当たり前なのだが、この時期に、既に、無償で開発環境
を提供し、サポートすることで、自社のハードウェア上で動くアプリケーション開発に、多くのISVに参加してもらう、という手法は確立していた。
そして、Apple、ISV、ユーザーの3者がHappyになるしくみが好循環していた。
Macworld Japanに集う者達は心から楽しい顔をしてExcitingしていたように思う。
日本経済新聞は、「原型はiモード」と言って、Appleのビジネスモデルは、あたかもNTTドコモが既に1999年に仕組んでいたように言っているが、 そんなことはない。と私は思う。
■2011.10.4追記
%1)「無料の」電子掲示板
http://www.teacup.com/
老舗の電子掲示板。
まあ、まだ便利に使わせて頂いて居るから文句言えないけど、記事を書き込む度に浮気調査のCMが流れるのは勘弁してもらいたい。。
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i-modeのやり方自体は悪くないと重いますよ。運営が悪いだけで。
ある程度閉ざした環境ってのは、アップルの方針と親和性がありますしね。
投稿: 詠み人知らず | 2010年3月22日 (月) 12時01分
詠み人知らずさん
コメントありがとうございます。
ですよね。i-modeの運営には問題がありましたよね。
i-modeってのは、当初の設計としては、新聞や雑誌等のコンテンツを携帯電話経由で読むことを想定していたのかなと思うんです。確か企画立案した女性は元雑誌編集者でしたよね。
で、閲覧した「データ量に比例」して課金するしくみを考えた。
中高生を中心に爆発的に携帯が普及した2000~2008年の間、i-modeで利益を出すドコモとしては、出会い系サイト等にアクセスする中高生の携帯電話に「フィルタリングの制限」をかけることを出来なかった。企業として利益を出し続ける構造を維持したかったからだと思うのです。
この運営に問題があったと思うんです。
対抗したauは、パケホーダイや、着うたなどで顧客を増やしましたよね。
データ量に比例した収益モデルに穴を開けた。
ちなみに、私の家族のケータイは3社混在。子供達は全員docomoです。何がいいんだか。。私はsbです。
投稿: いちのせ | 2010年3月23日 (火) 07時28分