ダゲレオタイプ写真は『ポジ』か?
長野県松本市の美術館で9月27日まで行われいる展覧会
『絵画と写真の交差 印象派誕生の軌跡』
http://www.city.matsumoto.nagano.jp/artmuse/p3/p3-html/p3-kikaku03.html
行ってきました。
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http://event.yomiuri.co.jp/jaam/shows/s_063.cfm
2009年10月24日(土)〜12月20日(日) 名古屋市美術館
で引き続き開かれるようです。
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1時間程度あれば十分かなと思ってたら、ものすごいボリュームがあり、結局2時間半ほど屯しておりました。
番号は今回の企画展用に美術館が付けた番号です。
印象に残った展示品リストをメモがわりに。
■P2-14 J.C.ビュットル ダゲレオタイプ写真からの彫版(1855年)東京富士美術館所蔵
今回の展示会で私は初めて知ったのですが、1839年に発明された写真技法は2つあった。
1つは、フランス、 ダゲレオ(Daguerreo)により発明されたダゲレオタイプ(Daguerreotype)。
もう1つは、イギリス、タルボット(Talbot)により発明されたカロタイプ(calotype)。
ダゲレオタイプは、銀板に1枚だけ制作されるポジ。
カロタイプは、撮影した原板は、ネガのため、何枚も複製ができる。
ダゲレオタイプ写真が何故ポジなのか、考えていた。
「銀板上に焼き付けられたポジティブ画像」「ダゲレオタイプに使う銀板は不透明であるから、感光面側から像を鑑賞する形となり、左右が反転した像を見ることとなる。」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%B2%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97)
つまり、
光沢鏡面上の銀板の金属表面に、光が当たったところだけ、Ag(銀)を析出させる。
光が当たらなかった場所は、(金属)鏡面のまま。
光が当たった場所は、Agの粒が光を散乱させ『拡散光』となる。
ここで、照明が鏡面反射しない角度で観察をすると、拡散光の部分は白く見える。
なので ダゲレオタイプはポジ。
何故こんなことを考えていたかというと、
「ダゲレオタイプ写真からの彫版」が「ネガ状態」で展示されていたからだった。
髪の毛は白く、顔は黒い。
こんなものが商品として流通していたとは思えない。なんか変だなあ。。
と気になってずっと眺めながら、上記のようなことを考えていた。
「何故タゲレオタイプはポジなのか。」と
そして気づいた。
これは、間接照明された壁の光を使って、「光沢鏡面反射」で観察すべき作品なのだ。見る角度を変えて、照明で白くなっている壁がが、作品に反射して写り込むようにのぞき込むと、ほら!見事に顔が白く、髪の毛が黒くなり、まるでそこに写真があるように浮かび上がった。
恐らく、
「接触などによって銀板上に定着した像が壊されやすいのもダゲレオタイプの欠点の一つである。ガラスなどで保護するなどの対策が必要となる。」
ということで、その対策として、「ダゲレオタイプ写真からの彫版」は生まれたのでしょう。
銀板に写真を撮り。
けがき針で直接、光の当たらなかった鏡面を像に沿ってなぞりながら削る。
最後に、露光で付着した銀を全て拭き取って、できあがり。(たぶん。。)
日本のような直接照明部屋ではなく、壁が間接照明されていたからこそ生まれた技法なのかも知れません。
美術館は、これに気づいていなかったようなのでそこに居らした職員に伝えた。
一生懸命ご自分でも検証した後、メモされていた。
さて、あと2週間で展示方法を変えるかどうか。
どなたか確認してみてください。お願い。
そういえば、思い出したけど、白黒ネガのガラス乾板も乳剤面側から観察して、背景を黒布にすると、露光した銀が光を拡散し、露光しなかった透明ガラス部は背景の黒に見える。するとネガのガラス乾板なのにポジに見えます。
ガラス乾板を手にしたらぜひ一度トライしてみて下さい。
結局、「ネガ」か「ポジ」かは、照明(観察)条件とセットなわけですね。
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