雑音源となる暗電流は主として素子表面で発生している
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http://www.jst.go.jp/pr/info/info648/index.html
開発代表者:小倉 睦郎 産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 主任研究員、起業家:長崎 健
本開発代表者は、量子細線構造のFETを光検出器に利用する研究過程で、極めて強い電流増幅作用が得られる構造を見いだしました。
この研究成果をもとに、赤外線も検出でき実用的な受光面積を持つ光検出器を目指して、InGaAs系を半導体材料とする新規なFET型光センサーの開発に取り組みました。
今回、フォトトランジスターの特性を解析した結果、雑音源となる暗電流は主として素子表面で発生していることを突き止め、この表面電流をトランジスターの電流増幅領域に流入させないブロック構造の新しいフォトトランジスターを開発しました。
この構造では、FET電流増幅部が中心部にあり、1段低くした周辺領域が受光部となっています。その段差のある受光部表面層に表面電流ブロック層を作り付けることによって、表面層の電流が内部に流入するのを阻止しています(図1)。
この表面電流ブロック層の採用により従来型に比べて暗電流が100分の1程度に低減されました。
さらに、これまで不要な電流(暗電流)がトランジスター増幅部に流入しなくなったことにより、増幅率も低減しなくなり、従来のフォトダイオードの数千倍の出力が得られました(図2)。
フォトダイオードでは理想的なアンプで増幅してもピコワット(10−12W)以下の光量を検出することは困難でしたが、このフォトトランジスターでは数10フェムトワット(10−14W)程度まで検出可能となりました。
また、本素子では段差構造で受光部を表面近くに露出できるため、InGaAs系フォトダイオードでは困難であった可視光の検出も可能となり、図2のように、従来型より2倍程度、広い波長域を検出できました。その結果、分光計測で最も広く使われている可視から近赤外域について、2種類のセンサーを必要としないで本製品1個で全波長域をカバーできました。また、バンドギャップ注9)の異なる薄層の半導体層を組み合わせることにより、1V程度の低い電圧で動作するため、特性のばらつきを抑えることも可能となりました。
「アイアールスペック株式会社」では今後、波長0.5〜1.7μmの広い波長範囲を持つ単体および1次元フォトトランジスターアレイの汎用品とカスタム仕様品を生産・販売します。
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