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2008年12月27日 (土)

イメージスキャナの防水

イメージスキャナの上に水に濡れたままの対象物を載せて画像取り込みする用途があります。

埋蔵文化財の研究で使用される赤外線イメージスキャナでは、水に浸して保管してある木簡をそのままプラテンガラスの上に載せて画像を取り込みます。

生化学研究では、電気泳動法という手法を用いてDNAやタンパク質の解析を行います。アクリルアミドというゲル(トコロテンのような透明な1mmほどの厚さのシート)の一辺に電荷を付与した検査対象を付け、電界により強制移動させ、分子量による分布を造ります。一見黒色の水性インクが、紙に載せるとカラフルなインクから構成されていることが解るペーパークロマトグラフィーに似た分析技術です。

タンパク質を可視化するためには、紫外線で直接タンパク質吸収を見る手法もありますが、簡易的には、古くから毛糸の染色に使われていたクマシーブリリアントブルー(CBB)という染料で色を付け、一般的なフィルムスキャナで画像取り込みする方法があります。波長λ=595nmにタンパク質結合に依存した吸収が発生し、この濃度(吸光度)測定によりタンパク質を定量可能となります。安価でかつ高感度な方法として微細な銀粉末による銀染色という可視化手法もあります。より定量性を求める場合は、高価な蛍光色素(励起光波長と蛍光光波長が異なる)を用いて蛍光イメージャーにて、可視化します。

このゲルも酢酸を含んだ水に保管するため、スキャナに載せる際は水浸しになります。

http://imeasure.cocolog-nifty.com/photos/fig/photogelscan_wp2.png

(タンパク質を電気泳動したアクリルアミドゲルを防滴加工したスキャナに乗せるところ)

イメージスキャナのプラテンガラスに水が付くと、次のような故障が発生する場合があります。

■シェーディング補正による校正

故障説明の前に、イメージスキャナの基本的な原理の話をします。
イメージスキャナは、取り込まれる画像の繰り返し再現性を高めるために、『シェーディング補正』という自己校正の仕組みを搭載しています。

デジタルカメラに、ホワイトバランスという機能があります。この機能をOFFにすると撮影環境によって、照明光の色温度が異なるため、蛍光灯下で緑 色になったり、電球照明下で黄色になったりします。ホワイトバランスは、このデジタル画像の独立色成分である、Red,Green,Blueの3つの色の 強度比率を調整することで肉眼で感じた色に校正します。

しかし、デジタルカメラで撮影した画像には、まだ次の2つの不安定性が残っています。
(1)明るさ :自動露出で撮影した場合は、対象に よっては、明るくなったり暗くなったりします。着ている服装によって、顔の明るさが異なる場合がありますが、この自動露出が原因です。これを避けるために は、マニュアル設定で、シャッター速度、絞りの2つを固定することができれば、撮影される対象の明るさは一定となります。
(2)周辺減光:レンズは、中央が明るく、周辺が暗くなる特性があります。特に絞りを明るくして(F値を小さくして)撮影した場合に顕著です。

イメージスキャナは、上記2つの不安定性を解消します。方法は、内蔵する白基準板をスキャンの前に予め取り込み、その白基準板との相対的な明るさを計算して画像を吐き出します。

この結果、白基準板の反射率が均一である限り、スキャンした対象物の明るさは、何度スキャンしても同じ明るさで再現されます。

透過原稿の場合は、白基準板ではなく、フィルムを載せるプラテンガラスの一部、もしくは、なにも置かれていない場所でこの基準データを得ます。

■水濡れによる故障

プラテンガラスを水浸しにした際に、このシェーディング補正に使用する白基準を濡らしてしまう場合があります。
白基準の付いている場所は、主に画像取り込み開始原点側の目盛が付いている部分(の裏側)です。
スキャナ組立て時、プラテンガラスに白基準板を密着して貼ると反射率のムラが発生するため、通常0.1mm程度の空隙を確保して貼られています。この空隙が毛細管現象を起こし、一度でも水に触れると全域にわたって水浸しになるケースがあります。
更に、この空隙が狭いため、一度入り込んだ水はなかなか乾燥しません。
基準となる白基準板の反射率が変わってしまうため、取り込んだ画像は、誤った補正により、水濡れの起きた場所のみ、白く飛んだ縦筋の画像となります。

以上の故障は、反射モードのみで発生するため、通常の白い紙に書かれた文書などを取り込む際には、故障の発生に気づきにくい現象です。
ただし、イメージスキャナを検査装置として使用する場合には留意が必要です。

■水濡れ対象物に強いイメージスキャナ

一方で、デジタルカメラ等で水に濡れた対象物を撮影する作業は困難を極めます。

スキャナの画像がキレイな理由 その2

に記載した通り、照明光の正反射光が写り込むためです。
これは、ガラス板で覆われた博物館などの展示物をストロボ撮影してストロボの光が写り込んでしまうために肝心のガラス板の向こうの展示品が写らないのと同じ現象です。

これに対して、イメージスキャナは、正反射光(光沢反射光)を回避する光学系レイアウトとなっているため、濡れたままの対象物でもキレイに取り込むことが可能です。

以上の理由から、弊社では、イメージスキャナのカスタマイズ案件として、プラテンガラスのシール(シリコーンゴムを使った防滴加工)作業を承っております。
また、誤ってプラテンガラスに水を付けてしまい、故障したイメージスキャナの修理も承っております。

ご希望の方はどうぞご連絡ください。

関連記事:

イメージスキャナの防滴加工

http://imeasure.cocolog-nifty.com/info/2009/07/post-a339.html

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