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2008年8月21日 (木)

フラットベッドスキャナ購入Tips

むか〜し書いたイメージスキャナの技術解説です。

再録します。^^)
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[2000.3.18]

フラットベッドスキャナ購入Tips

画像品質を優先する人にとってみれば、
フラットベッドスキャナのハードウェアスペックで気になるのは
1.解像度
2.階調
3.スピード
の3点でしょう。
(ホントは色再現性もありますが今回は言及しません。)

まず、1.や2.は、3.と逆な特性です。つまり、解像度が高い程、階調が大きい程、速度は遅くなる。これは、ひとえに、ため込む光の量で画質が決まるからです。1.2.3.全て達成するには、火災を起こしそうな光源を搭載する必要があります。

そこで、必要十分な解像度や階調はいくつか。という議論になります。これは、用途に依存します。つまり、取り込む原稿が持っている情報量以上のスペックは不要だからです。

では、解像度と階調の観点で取り込む原稿を見ていきましょう。       

【解像度】

a.反射原稿:写真や印刷物

印画紙は、600dpi くらいです。素人のピントの甘い写真なら300dpi。250万円(?)もする銀塩式デジタルフルカラープリンタ、富士のピクトログラフィーの書き込み解像度でさえ高々400dpiです。

日本のオフセット印刷物は175線。よって、350dpi以上の情報はありません。(ただし、秀逸な「モアレ除去」=「de-screening」機能が必須です。)例外は、フォントやロゴなどのアウトラインを忠実に再現するためのものです。これらは一般に1200dpi以上が使われています。イメージセッタという印刷用のフィルムに直接書き込むための生データとするため。

以上は、じつは、肉眼の分解能力に依存しています。人が鑑賞するメディアを作る側の、必要十分条件としての原理です。肉眼は、視力1.0の人で30cm先の原稿の291dpiを分解します。2.0の人でその倍。よって、600dpi前後が肉眼の標準的な分解力とみることができます。フォントなどアウトラインでは1200dpiが必要となる理由は、コントラストのくっきりした輪郭検出の能力が、通常の風景画像などの観察解像度とは別のしくみがあるためかとおもいます。

b.透過原稿:写真フィルム

これはフィルムに含まれている情報量の議論です。フィルム粒子寸法が10ミクロンとして2540dpiの記録情報ということになります。よって、最低でも2800dpiは欲しいですよね。できれば、4000dpi。

【階調】

さてつぎに階調です。

a.反射原稿

これは、もっとも黒いところの濃度で決まります。印画紙でOD値 2.2。OD値とは、Optical Densityの略で、反射率のケタを意味します。
OD = -log (Ref.)
例えば、反射率が10%であれば、Ref.=0.1 , OD = 1.0
反射率が1%であれば、Ref.=0.01 , OD = 2.0
です。
もし、OD値2.0まででよければ、1:100のコントラストを見分けることができるスキャナで十分なわけです。

さて、このOD値をいわゆるBITにどう結びつけるかですが、次の式で結びつきます。
        bit = 3.322 * OD
つまり、OD 2.2であれば、7bitもあれば良い。他に、シェーディング補正に1bitを費やします。したがって、反射原稿を取り込む分には、8bitで十分です。

ただし、もうひとつbitにからむ要因として、ディスプレイのガンマ特性というのがあります。これは、CRTの特性として、入力信号に対する菅面輝度が下に凸の放物線特性を持っているために、センサの出力のまま表示すると真っ暗なコントラストの激しい硬調な画像になります。そこで、その分を逆に変換して、総合特性をリニアに戻します。これを、8bitのデータを得てから戻すと画像が劣化します。具体的には、補正した画像の「ヒストグラム」に「歯抜け」という現象が発生します。ひどい場合には、滑らかであるべきグラデーションに等高線のような輪郭が発生します。

これを避けるために、スキャナ側であらかじめ逆のガンマをかけた後に8bitデータを出力します。画像劣化を防ぐために、逆ガンマ変換かける前のデータは8bit以上(最近では12bitが主流)のデータを保持するわけです。

ちなみに、ディスプレイに渡された8bitデータは、既に式
        bit = 3.322 * OD
ではなくガンマ分を加算した式
        bit = 3.322 * OD / Gamma
となっています。この式から解ることは、例えばターゲットディスプレイガンマが2.2のデータであれば、8bit(255)データの最も暗い値の「1」という数字は、OD値に換算すると、5.3を意味します。つまり、イメージデータ8bitの中にOD値5.3までは表現しきれるということになります。もちろんハイライト側は情報密度が粗くなっていますが、肉眼の視覚特性がガンマ3.0相当なので、気づきにくい。

だらだら書いてしまいましたが結論は、

反射原稿に必要な階調は、bitで7-8bit。ガンマ変換を考慮しても12bitもあれば十分です。また、ディスプレイに適正に明るさ表示される処理(逆ガンマ変換)が成されたデータであれば、出力側は、8bitで必要十分。

b.透過原稿

ポジ(リバーサル)フィルムでOD3.6が最大。
        bit = 3.322 * OD
よって、まともにスキャンしようとするならば「きちんとした」12bitが必要です。

ちなみに、CCDスキャナがいつまでたってもポジフィルムを読む限りにおいて、ドラムスキャナに勝てない理由は、「きちんとした」12bitデータをCCDは作れないからです。これはひとえに、1画素のデータを作り出すためにため込む光の数に依存しています。ドラムはCCDの1〜2ケタ多い光を貯めています。100万円を越える業務用CCDスキャナでさえも、使われているセンサの蓄積光子(=電子)数は40万。ドラムスキャナは簡単に見積もっても200万を越えています。私のサイトの画像処理の世界に簡単な計算があります。普及型のフラットベッドでは、せいぜい2万でしょう。

ネガはOD 2.7-3.0程度。ですが、ネガ−ポジ変換するカーブが先の逆ガンマ変換に比べて、更に急激。よって、画質劣化(先の歯抜け)を避けるために、十分なbitが必要となります。例え、最大濃度を取り込む能力が無いとしてもbit数は、ネガのためにこそ必要と言えます。

まとめると、
bitは、反射原稿であれば8bitで十分。ポジ、ネガ用に12bitは必須。

更に、出力bit数について。

レタッチしない場合には8bitで十分です。自動露出で最適な画像が作れるソフトウェアとセットになっていれば、めったに12bitデータからレタッチして印刷するようなことは無いです。なぜなら、12bitデータは印刷できないからです。OSがサポートしていません。

以上が基礎情報です。
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最近は、16bitデータをフォトショップで開いた状態でも印刷を実行できたりするので、「12bitデータは印刷できない」とは言えないかな。。とか、
テクスチャー再現のためには、反射原稿であっても、1200dpiくらいの解像度でフルカラーでスキャンすると「おもしろいこと」が起きたりすること、が発見され、一概に8年前の記述が正しい訳ではないのですが、基本的な部分は良いかなと思います。

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