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2008年5月23日 (金)

光ショットノイズ

1990年代の初めの頃、「1000万円以上の価格で販売されているドラムスキャナに対して、

どうしてCCDタイプのスキャナは画像品質で勝てないのだろう。」

という素朴な疑問からいろいろと考えていた時期がありました。

画像品質には、解像度、階調性、色再現性の主に3つの要因があります。

当時フラットベッドスキャナの解像度は、高々400dpi程度でしたが、

いずれレンズとCCDの製造技術の勢いから35mmフィルムに必要となる4000dpi以上に到達するだろうと楽観していました。

しかし、階調性については何がその根本原因なのだろうと調べていく内に『光ショットノイズ』というノイズの主成分の事を知りました。

センサ1画素に蓄えるフォトン(光子)の数の平方根が光ショットノイズであり、これは量子的な揺らぎから来る不可避なノイズであること、つまり、1画素に蓄えることができるフォトンの数量でその限界が決まることを知りました。

当時、CCDの画素あたりに蓄えることができるフォトンの数なんて、どのセンサメーカーもまともにスペック表示しておらず、有ったとしても 感度:_[V/lux・Sec.] という表記であり、A/D変換前のアンプ倍率でいくらでも数字が変えることができるような詐欺のような表示のみでした。

そこで、原稿面照度は既知なので、レンズの光伝達効率から、CCD面上での照度を計算し、実際に作っているイメージスキャナの光源で照射された原稿面上の照度と、ラインセンサの蓄積時間(光を貯めるシャッター速度に相当)から、1画素あたりの光量を計算し、緑の波長であることを仮定して、1ケのフォトンの持つエネルギー[式:hν=E]から逆にフォトンの数を計算する方法を思いつきました。

その計算結果が、次のpdfにまとめてあります。

[1999-6-24] 日本画像学会技術講習 で使った資料 です。5-2.階調性をご覧下さい。

この時の計算から、当時設計していたイメージスキャナで大凡、2~3万フォトンの光子を貯めていることが推定されました。

やがて、KODAKがきちんとこの画素あたりの蓄積電子数をスペックに謳っていることを知りました。

(光電変換効率が100%であると仮定すれば、電子数はそのまま受けたフォトン数に相当するわけです。)

そのKODAKのCCDで、40万電子。当時、そのCCDはドラムスキャナを販売している印刷屋のハイエンドCCDスキャナに使われていました。100万フォトンと仮定して、平方根で1千フォトン。S/Nは、100万/1千なので、1千。

つまり、OD値換算すると3.0まで光ショットノイズ無く滑らかな画像を得られる計算となります。

[2008.5.23計算ミス発見。修正済。]

最近も、ES-2200というエプソンが造ったスタンダードA4機のスキャナをリニアガンマ(%1)で16bitスキャンし、デジタル的にフォトンを加算する手法で、光ショットノイズの変化を調査してみました。

その結果、加算する画像の枚数(N)の平方根に反比例してノイズが低減することがわかりました。

技術報告書 『iMeasureScanを用いたマルチスキャン(デジタル増感)の効果評価

このことから、下手な暗部ノイズ低減処理を入れてごまかすよりも、センサの素直な光ショットノイズをユーザーに手渡し、デジタル加算というソフトウェア的な処理によって、格段に滑らかな画像を得ることができることが証明できました。

この手法を使って、止せばよいのに(^^;)最大OD値 6.0までのステップタブレットを使って、定価:14万8千円で販売されている(た)フラットベッドスキャナで、いったいいくつまで暗部が見えるのかを調査した結果、256回の加算スキャンによって、OD値 5.2までは見えることが分かりました。

検出光学濃度限界に挑む

http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_2675.html

いやあオモシロイ。。

で、もっちんさん(!)いきなりですが、

ラインセンサってのは、その蓄積電子数を格段に増やすカスタマイズってのは難しいのでしょうか。

例えば、30cmウェーハー1枚分をカスタムセンサとして製造プロセスの一部を変更することで、

従来画素あたり3~5万程度だった蓄積電子数をせめて1ケタ増やすことなんて製造委託は、簡単にはできないでしょうか。

既成のイメージスキャナのCCDとピンコンパチにして製造できるとすれば、面白い商品企画があるように思っています。

【補足】

秀逸なCCD/CMOSセンサについての解説を見つけました。

■大学の先生

www.ic.is.tohoku.ac.jp/~swk/lecture/ic2005/kagami_ic20050419.pdf

イメージセンサの基礎

東北大学 大学院情報科学研究科 鏡慎吾 2005.04.19

光ショットノイズについての説明:page-24

CCD/CMOSの原理の説明:page-14

■デジタルスチルカメラの設計者(かな。。)

(追記:2010.4.8)
光ショットノイズの検証をされています。
センサメーカーが飽和電荷量を仕様書に掲載していないことに言及し、Kodakの仕様書を確認しています。

-----
http://f42.aaa.livedoor.jp/~bands/ccd/ccd.html
3.ショットノイズ
そこで少し古い製品ですが、Kodakの35mmフルサイズ1100万画素CCDのスペックを調べてみました。飽和電荷量は6万エレクトロン=電子6万個 となっています。
-----

(追記:2017-5-31)
この光ショットノイズ低減のテーマである、「1画素に貯めることのできる光子数をいかに増やすか?」に沿った新しい技術の進展がありました。

(1)シリコンフォトダイオードではなく、有機薄膜で光電変換する。
(2)後段のC-MOSで電荷を蓄積する。
という役割分担のアイデアです。
これで、理論上は、いくらでも電荷を蓄積するセンサが開発されるはずです。
いよいよ、ドラムスキャナが見ることのできなかった世界を見せてくれるのかも知れません。

panasonic プレスリリース 2016年2月3日
http://news.panasonic.com/jp/press/data/2016/02/jn160203-3/jn160203-3.html




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コメント

|ラインセンサってのは、その蓄積電子数を
|格段に増やすカスタマイズってのは難しい
|のでしょうか。

光電変換された信号電荷を蓄積する場所は2箇所あり、
 1)フォトダイオード
 2)CCD転送ゲート
です。
このどちらをも、たとえば1桁多い最大電荷蓄積量にする必要があります。
半導体中の不純物濃度をもう少し増やすことも考えられますが、まず取るべき簡単な方法は、面積増加です。
第一次近似的には、それぞれ面積が10倍必要になります。
画素ピッチを増やせないなら、細長いフォトダイオードにする必要があります。(光が当たる幅はそのままにしておく)また、信号電荷の通り道も細長~~~くなります。
単純に、CCDチップの幅がかなり増え、高くなります。

そして、フォトダイオードからCCDまでの経路が長くなるので、フォトダイオードからCCD転送チャンネルへ信号がスッと読み出しにくくなると思います。(残像が多くなる)
転送ゲートも10倍長くなりますので、キャパシタンスが10倍に増え、駆動回路のドライブ能力も10倍必要です。

という感じで、出来なくはないですが、コスト高、性能低下、駆動回路等の変更、等々の解決すべき課題が発生します。
また、CCDをカスタムで開発するのは、すぐ億の単位のお金がかかります。

それでも意味があるなら、開発費を出してでも、やればいいのです。


大学の研究者です。ホームページ非常に興味深い考察で非常に参考になりました。

>ラインセンサってのは、その蓄積電子数を格段に増やすカスタマイズってのは難しいのでしょうか。

蓄積信号ではなく、フォトダイオードの連続信号を扱うようなカスタマイズができれば、現状の画素ピッチを増加させることなく蓄積電子数に相当する電子数を増やしていくことはできるのではないかと思います。

小さなバケツで飽和する前に何回も読みだすイメージです。あとは光源の強さ次第でいかほどにでもなるかと

もし、1MHzくらいの周波数で応答する画素があれば、1億電子相当(例えば1Hzあたり100電子)を検出することも技術的には今後可能になるかと思います。

sitoさま
コメントありがとうございます。
お返事遅くなりすみません。

1億電子相当を検出できると、S/N比は、1万となって、OD値4.0相当が綺麗に光ショットノイズ無く読めることになりますね。

フォトリソのクロム蒸着や製版用フィルムなどは、OD値4前後が必要となりますので、実用化できると用途が結構ありそうです。

もしそんなデバイスができるなら楽しみです。

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