検出光学濃度限界に挑む
先日、エドモンドオプティクスから販売されている透過型グレースケールステップチャートを2枚購入しました。
最大光学濃度(OD値)3.0の15段の透過型チャートです。(%1)
何故2枚購入したかというと、これを2枚重ねして、最大光学濃度 6.0のステップチャートにして、イメージスキャナの検出限界OD値を調べてみたいと思ったからです。
さっそく挑戦してみました。結果を示します。
右端部にOD値を示して有ります。
7:OD2.8
8:OD3.2
9:OD3.6
10:OD4.0
11:OD4.4
12:OD4.8
13:OD5.2
実験1:ES-2200、1回スキャンした結果
実験2:ES-2200、64回加算平均した結果(iMeasureScanマルチスキャンモード使用)
実験3:ES-2200、64回単純加算した結果(iMeasureScanマルチスキャンモード使用)
実験4:ES-2200、256回単純加算した結果(iMeasureScanマルチスキャンモード使用)
以上の実験から分かることは、
市販のCCDセンサ方式のイメージスキャナを使って、OD値5.2程度まで見分けることができる。
OD値 5.2とは、1/(10^5.2)ですので、約16万分の1の光を捉えていることになります。
加算平均処理と単純加算の違い:
加算平均処理は、1回のスキャン値と値が変化せずに、ノイズだけがスキャン回数を増すにつれて低減していきます。
単純加算処理は、回数に応じて、スキャン値が大きくなります。
16bitのビット数は、最大で65535までしか表現できないため、16万分の1の濃度を表現できません。
つまり、加算平均では、最大でもOD 4.8までしか表現できません。
デジタル化する際に発生する誤差のため、これを量子化ノイズと呼びます。
そこで、16bitTIFFデータにOD4.8以上の情報を載せるために、単純加算スキャンを行います。
ただし、この場合スキャン回数分スキャン値が大きくなり、低濃度領域は、飽和します。
(%1)透過型チャート
メーカー:エドモンドオプティクス
商品コード:90574-I
外形寸法30mmx150mmですので、濃度1段あたり8mm程度あり、分光光度計にて実際の濃度を計測する予定です。
(2009.1.18追記)
透過型グレースケールの光学濃度測定を行いました。
詳細は、下記記事をご覧下さい。
λ=555nmでの透過型グレースケールの光学濃度は、次の式で表示できます。
1枚の場合:
y=0.1977 * x + 0.0574
この式の使い方は次の通りです。
可視光にて、ベース濃度は、0.0574
5段目(ベースを1と数えると6段目)は、y=0.1977 * 5+0.0574=1.1033
透過率に換算するためには、次の式を使います。
T = 10^(-1*OD)
OD:1.1033の場合は、
T=10^(-1.1033)=0.07883 (=7.88%)
■2枚重ね併せて使う場合:
もう1枚のグレースケールも同様の濃度であると仮定して、
光学濃度は重ね合わせた場合、足し算となります。(%1)
よって、式は、
y(2枚重ね)=0.3954 * x(2枚重ね) + 0.1148
となります。
最高濃度は、(x=14を代入して)OD(max.)=5.65
■%1)濃度は足し算になる
透過率では、かけ算ですが、濃度に換算すると足し算になります。
OD = -1*log(T)
T: 0 ~ 1.0
フィルタ1の透過率:T1
フィルタ2の透過率:T2
フィルタ1とフィルタ2を重ねた際の透過率:
T(12) = T1 * T2
フィルタ1とフィルタ2を重ねた際の光学濃度:
OD(12) = -1*log(T1*T2)
= -1* (log(T1) + log(T2))
= OD(1) + OD(2)
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