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2007年12月16日 (日)

イメージスキャナの解像度 その2

その1で記載した被写界深度(ピント範囲)は、縮小光学系での話です。

イメージスキャナの光学結像系(レンズ)は、2つに分類されます。

1.縮小光学系

2.等倍光学系 もしくは 密着光学系

スキャンする相手(対象物、被写体)の寸法と、画像取込するセンサの寸法が同じ場合、等倍光学系。

薄型のスキャナや電子黒板のスキャニングユニットなどは、2.の等倍光学系となっています。縮小光学系の場合は、デジカメで写真を撮るのと同様、被写体のサイズに対して、1/4~1/5程度のサイズのセンサ(CCDセンサ)を使っています。こちらに使うレンズは、コンビニのコピー機を覗けば分かるとおり、Φ(←ファイ直径のこと)20~40mm程度の1本のレンズを使っています。

これに対して等倍光学系は、ロッドレンズ(三菱レイヨンの名称)や、セルフォックレンズ(日本板硝子の名称)といわれるΦ1mm程度の(正確な)円柱形状の結像系レンズを緻密にスキャンサイズだけならべて1列に配列したレンズを使います。

これらのレンズは、被写体からセンサまでの結像距離が非常に短いため、コンパクトなスキャナを作ることができます。

被写体からセンサまでの結像距離:(A4サイズスキャナでの参考値)

・縮小光学系の場合:200~400mm

・等倍光学系の場合:9~20mm

.

等倍光学系(密着光学系)に使われるレンズは、具体的には、現在流通しているもので、

三菱レーヨンの ロッドレンズ

http://www.mrc.co.jp/rd/research/img/rodlens.pdf

日本板硝子の セルフォックレンズ

の2種類があります。

これらは原理はいずれも同じで、円柱形状の光学部品(φ1mm程度)が整列している形状をしています。

http://www.nsg.co.jp/products/info-device/sla.html

(日本板硝子のホームページには現在図はありません。弊社で取り寄せたカタログの図をスキャン&掲載させて頂きました。)

ロッドレンズ、SLAともに各メーカーの用語であり、一般(学術)名称としては、GRINレンズと呼びます。レンズが光学的に結像する原理が、円柱の中心軸に対して屈折率が外側になるほど小さい(修正:2007.12.27)ように設計、製造されているため、屈折率が傾斜しているという意味で、

GRaded-INdex =GRIN と呼びます。(修正:2007.12.27)

三菱レーヨンの資料にわかりやすく図示されています。(%2)

等倍光学系(密着光学系)のレンズの被写界深度は浅く(狭く)、縮小光学系のレンズに対して一般的に1/10以下です。代表的なセルフォックレンズ SLA-20Dの非写界深度(ピント範囲)を図示します。

(日本板硝子のホームページには現在図はありません。弊社で取り寄せたカタログの図をスキャン&掲載させて頂きました。)

この図から、MTF30%を切る横軸を読みます。

ベスト焦点から片側に離れる場合の許容値(ピント範囲、焦点深度)は、

400dpi ~ 4LP/mmにて 0.33mm

600dpi ~ 6LP/mmにて 0.21mm

800dpi ~ 8LP/mmにて 0.16mm

程度であることが解ります。(%1)

その1で記載した縮小光学系では、

400dpi(4LP/mm)では、0~7.5mmがピント範囲。

でしたので、被写界深度の違いは20倍以上に及ぶことがわかります。

よくイメージスキャナのピント範囲についてコメントする表現で、CCDイメージスキャナとCISイメージスキャナと言う言い方があります。これは正確には、縮小光学系と等倍光学系(密着光学系)のことを表しています。

CISとは、Contact Image Sensorの略で密着型センサと呼ばれます。実際に密着しているわけではなく、等倍光学系(密着光学系)のレンズを通じて撮像しています。

CCDとは、Charge Coupled Deviceの略で、シリコンのセンサ(フォトダイオード)が光を受けて発生した電子(電荷)をどういう手段で読み出しのために転送するのか?という手法を意味する表現でありますが、これがセンサの一般名称として呼ばれるようになりました。

実は、CISとして使われているセンサも内部では、5~6ケのCCDを直線的につなげて製造している事例もあります。つまり、CISも内部ではCCDなのです。

ここまで読まれた方は、明日から、

『CISスキャナよりもCCDスキャナの方がピント範囲が広い。』

などと言わず、

『等倍光学系(密着光学系)のレンズを使うスキャナはコンパクトでいいんだけど、被写界深度が0.2mm程度と狭い。もし立体物などを扱うのなら、縮小光学系を使ったイメージスキャナの方が10倍以上、ピント範囲が広くてイイんだよね。』などと、正確な表現に心がけて下さいまし。^^)

【補足】

ここでの議論を整理した秀逸な記事があった。

日経の関連BP雑誌の記事のようです。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NBY/techsquare/20031218/1/

1点だけ、誤解があったのでちょっとコメントします。

『密着光学系のもう一つの利点は,消費電力が少ないこと。元々密着光学系は読み取り部の大きさが小さいので,動かす電力も少ない。』

CIS方式の大きなメリットは、USB電源で動作してしまう程、低消費電力であること。

しかし、消費電力が少ない理由は、日経が述べている「小さいこと」だけが要因ではない。

実は、主要因は、「センサの1画素あたりの面積が大きいこと」である。

何故か?

縮小光学系では、約1/4に像を小さくする。1pixelのセンサは、600dpiの画像を取り込む際に、2400dpi相当の細かいセンサ画素を使う。

実際の寸法で言えば、42μm(600dpi)の像を取り込むために、10μm(2400dpi)の寸法のセンサ画素を使う。

これに対して、等倍(密着)光学系では、42μmの像を取り込むために、42μmのセンサ画素を使うことができる。

ざっと面積で16倍メリットがある。

そのため、「もし、レンズの光伝達率が同じであると仮定した場合」光源のパワーを1/16に落とすことができる。例えば縮小光学系で2Wの光源を使っていたとすれば、0.1W以下のパワーで良い計算になる。

実際、CIS方式のイメージスキャナの光源は、縮小光学系のそれが線光源であるのに対して、一般的には、点光源であり、アクリル板によって点→線光源に変換して使っている。この点光源部分に(R,G,B)の3原色LEDチップを1ケづつ置き、時間差攻撃で点滅させて1本のモノクロセンサからフルカラー画像を取り出す。

何故「読み取り部の大きさが」小さくなるのか、何故光源パワーが少なくて良いのか?というもう1段低いところの主要因は、センサがデカくても良いからである。

(%1)密着光学系(GRINレンズを用いた等倍光学系)でのレンズ配置設計

800dpi ~ 8LP/mmにて 0.16mm ですが、プラテンガラス高さを少し低くして設計すれば、被写界深度を0.32mmにすることが可能です。この場合、最適焦点高さは、プラテンガラス直上ではなく、0.16mmほど浮いていることになります。恐らく実際の設計はそうなっているんではないかと思います。

(%2)三菱レーヨンの資料 http://www.mrc.co.jp/rd/research/img/rodlens.pdf

図2のRODSCOPEの用途にカラースキャナの応用事例として挿入されている写真は、EPSON GT-9500の写真のようです。このモデルは、エプソンとして始めてカラーCCDを搭載した機種ですが、レンズは従来の縮小光学系の機種です。従って、GRINレンズを使用していません。

実は、エプソンから最初に投入したイメージスキャナの2機種 GT-3000,GT-4000では、GRINレンズを搭載していました。(イメージスキャナ年表 http://timeline.nifty.com/portal/show/6550 )世界で初めて液晶カラーテレビ(2型)を開発したセイコーエプソン(1984年当時諏訪精工舎)は、液晶分野だけでなく、アモルファスシリコンセンサ分野でも突出した技術を有していました。内作部品の商品化というテーマも絡み当初は、密着センサ(CIS)をエプソンのスキャナは採用しました。

マッキントッシュによるDTPの波に乗り、第3弾のGT-6000が爆発的なヒット商品になるわけですが、その時のセンサは外部調達によるCCDセンサでした。内作部品では無くなったのです。しかし、1988年に発売された第2弾のカラーイメージスキャナGT-4000からユニークな光源をカラーイメージスキャナとしては世界で初めて搭載しました。キセノン冷陰極蛍光管です。現在、コンビニエンスストアに置いてあるデジタル複写機のイメージスキャナ部分の光源はいずれのメーカーも、このキセノン冷陰極蛍光管となりました。またみなさんの家庭に普及しているプラズマTVも発光原理は、キセノンガスを励起した後に放射されるλ=147nmの紫外線を蛍光体が可視の青、緑、赤に変換して発光しているものです。(通常の蛍光灯は、水銀ガスが封入されλ=257.3nmの紫外線が発生し(60%効率)それを蛍光体で可視光に変換(フォトルミネッセンス約25%)しています。)

エプソン以外のメーカーの光源は、全て水銀封入タイプの従来型の蛍光灯を使っていたため、得られる画像の繰り返し再現性が安定しませんでした。その違いが大きな競争力を生んだ1つの特徴となりました。

ちなみに、今年から一般照明用として水銀レスの蛍光管が発売されました。

http://techtech.jp/jdl/weblog/blog/11/24069

こちらもキセノンガス封入タイプです。

そもそもこのランプの種まきは東芝が行いました。

1970年代に当時、東芝の中央研究所にて、環境問題をテーマに将来の水銀レスを夢見て開発に着手した光源です。

垂れた穂の刈り取りはどうやらウシオ電機が成功したようです。

東芝の研究者の夢は、30余年を経てようやく現実化したといえます。

【修正履歴】

2007.12.18 SLA-20DのMTF図を変更しました。最初にアップした画像は、レンズ中心を前後させた際のMTF値でした。今回掲載したMTF値は、レンズを固定した状態で被写体側(もしくはセンサ側)を遠くしたり近くしたりした場合のMTF値です。図の変更に際し、本文中の焦点深度値も読み直しました。約倍になっています。

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