その1で記載した被写界深度(ピント範囲)は、縮小光学系での話です。
イメージスキャナの光学結像系(レンズ)は、2つに分類されます。
1.縮小光学系
2.等倍光学系 もしくは 密着光学系
スキャンする相手(対象物、被写体)の寸法と、画像取込するセンサの寸法が同じ場合、等倍光学系。
薄型のスキャナや電子黒板のスキャニングユニットなどは、2.の等倍光学系となっています。縮小光学系の場合は、デジカメで写真を撮るのと同様、被写体のサイズに対して、1/4~1/5程度のサイズのセンサ(CCDセンサ)を使っています。こちらに使うレンズは、コンビニのコピー機を覗けば分かるとおり、Φ(←ファイ直径のこと)20~40mm程度の1本のレンズを使っています。
これに対して等倍光学系は、ロッドレンズ(三菱レイヨンの名称)や、セルフォックレンズ(日本板硝子の名称)といわれるΦ1mm程度の(正確な)円柱形状の結像系レンズを緻密にスキャンサイズだけならべて1列に配列したレンズを使います。
これらのレンズは、被写体からセンサまでの結像距離が非常に短いため、コンパクトなスキャナを作ることができます。
被写体からセンサまでの結像距離:(A4サイズスキャナでの参考値)
・縮小光学系の場合:200~400mm
・等倍光学系の場合:9~20mm
.
等倍光学系(密着光学系)に使われるレンズは、具体的には、現在流通しているもので、
三菱レーヨンの ロッドレンズ
http://www.mrc.co.jp/rd/research/img/rodlens.pdf
日本板硝子の セルフォックレンズ
の2種類があります。
これらは原理はいずれも同じで、円柱形状の光学部品(φ1mm程度)が整列している形状をしています。

http://www.nsg.co.jp/products/info-device/sla.html
(日本板硝子のホームページには現在図はありません。弊社で取り寄せたカタログの図をスキャン&掲載させて頂きました。)
ロッドレンズ、SLAともに各メーカーの用語であり、一般(学術)名称としては、GRINレンズと呼びます。レンズが光学的に結像する原理が、円柱の中心軸に対して屈折率が外側になるほど小さい(修正:2007.12.27)ように設計、製造されているため、屈折率が傾斜しているという意味で、
GRaded-INdex =GRIN と呼びます。(修正:2007.12.27)
三菱レーヨンの資料にわかりやすく図示されています。(%2)

等倍光学系(密着光学系)のレンズの被写界深度は浅く(狭く)、縮小光学系のレンズに対して一般的に1/10以下です。代表的なセルフォックレンズ SLA-20Dの非写界深度(ピント範囲)を図示します。

(日本板硝子のホームページには現在図はありません。弊社で取り寄せたカタログの図をスキャン&掲載させて頂きました。)
この図から、MTF30%を切る横軸を読みます。
ベスト焦点から片側に離れる場合の許容値(ピント範囲、焦点深度)は、
400dpi ~ 4LP/mmにて 0.33mm
600dpi ~ 6LP/mmにて 0.21mm
800dpi ~ 8LP/mmにて 0.16mm
程度であることが解ります。(%1)
その1で記載した縮小光学系では、
400dpi(4LP/mm)では、0~7.5mmがピント範囲。
でしたので、被写界深度の違いは20倍以上に及ぶことがわかります。
よくイメージスキャナのピント範囲についてコメントする表現で、CCDイメージスキャナとCISイメージスキャナと言う言い方があります。これは正確には、縮小光学系と等倍光学系(密着光学系)のことを表しています。
CISとは、Contact Image Sensorの略で密着型センサと呼ばれます。実際に密着しているわけではなく、等倍光学系(密着光学系)のレンズを通じて撮像しています。
CCDとは、Charge Coupled Deviceの略で、シリコンのセンサ(フォトダイオード)が光を受けて発生した電子(電荷)をどういう手段で読み出しのために転送するのか?という手法を意味する表現でありますが、これがセンサの一般名称として呼ばれるようになりました。
実は、CISとして使われているセンサも内部では、5~6ケのCCDを直線的につなげて製造している事例もあります。つまり、CISも内部ではCCDなのです。
ここまで読まれた方は、明日から、
『CISスキャナよりもCCDスキャナの方がピント範囲が広い。』
などと言わず、
『等倍光学系(密着光学系)のレンズを使うスキャナはコンパクトでいいんだけど、被写界深度が0.2mm程度と狭い。もし立体物などを扱うのなら、縮小光学系を使ったイメージスキャナの方が10倍以上、ピント範囲が広くてイイんだよね。』などと、正確な表現に心がけて下さいまし。^^)
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