スキャナの画像がキレイな理由 その2
今回は、「スキャナはテカってしまう写真をどのようにしてキレイに撮るのか」です。
博物館や美術館、ショーウィンドーをこっそり撮影してストロボが発光してしまい、真っ白になってしまった。なんていう経験はないでしょうか。
これらはみな、「正反射(鏡面反射)」光のいたずら。
先に、
スキャナの画像がキレイな理由 その1で述べた光の動きを図にしてみました。
まずは、正反射光の模式図です。
照明装置から光沢(写真)表面に入射した光は、光沢面に垂直な方向と成す角度(θ)と同じ角度(θ)で反射します。
(1) 光沢面に垂直な方向(これを面法線といいます)
(2) 入射光
(3) 反射光
これらは、全て同じ平面に含まれています。
次に、一眼レフカメラ(デジタルカメラも同じ)で撮影する場合の模式図です。
カメラ正面部分は問題ないのですが、撮影範囲の端の部分は、照明装置の正反射光が写り込んでしまいます。対策は、(a) カメラ~原稿間を距離を離すか、(b)照明装置の入射角度をもっと斜め(面法線と成す角度を90度に近く)にする、の2つの方法があります。
しかし、(a)はF値(絞り)が大きくなり暗いレンズとなる。(b)は、照明装置からの距離(もしくは距離の2乗)に反比例して照明強度が変わるため原稿中央と周辺で照明光ムラが激しくなる。という欠点があります。
そこで、スキャナです。^^)
イメージスキャナは、デジタルカメラのセンサが二次元の格子状の画素配列であるのに対して、一列(ラインセンサ)のセンサを使っています。線状の光源(たとえば蛍光管)を使って、原稿の一部を線状に照明して、その反射光をレンズを通じてセンサに結像します。ここまでは、デジタルカメラと同じです。
今見ている方向と(ぐるっと水平方向に)直角な方向からこれを見たのが次の模式図です。
線状の照明装置は、取り込もうとしている原稿の一部を線状に照明していますが、その照明角度は、一般的に45度程度の角度で照明します。
そのため、図に示すとおり照明光の正反射光はレンズ~センサ方向に届くことはありません。照明装置、レンズ、ラインセンサを含む光学ユニットを「キャリッジ」と呼びます(%1)
。このキャリッジを画面水平方向(取り込んだ線状の1ライン画像とは直角方向)に機械的に動かす(副走査:sub-scanning)ことで連続的に線状画像を取り込み、結果を合成して二次元の画像を得ます。
以上の光学的レイアウトのしくみによって、
イメージスキャナは、テカってしまう写真をキレイに取り込むことができるのです。
更に、イメージスキャナは、照明装置の長さ方向の照明ムラ(一般的に、10%~30%程度のムラがあります。)とレンズの明るさムラ(中央がもっとも明るく周辺に行く程暗くなります。周辺減光と呼びます。)によって発生するセンサ上での原稿のみかけの輝度ムラを自動補正する機能(この校正機能のことを『シェーディング補正』といいます。)を持っています。この機能を搭載しているがゆえに、イメージスキャナは、原稿の正確な反射率に相当する明るさを得ることができます。
次回は、「イメージスキャナは反射率測定器」です。
(%1)スキャナの内部構造をきれいなイラストと動画で説明しているサイトがあります。
http://www.sugilab.net/jk/joho-kiki/1305/
http://www.sugilab.net/jk/joho-kiki/1306/
http://imeasure.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_1a40.html
スキャナの画像がキレイな理由 その1
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